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東京五輪前にエースが驚きの引退。
トランポリンを「みんなで盛り上げる」 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byMATSUO.K/AFLO SPORT

posted2019/05/20 10:30

東京五輪前にエースが驚きの引退。トランポリンを「みんなで盛り上げる」<Number Web> photograph by MATSUO.K/AFLO SPORT

昨年6月の「第33回世界トランポリン競技選手権大会 日本代表最終選考会」では2位に入り代表に選出されたが、腰痛の悪化で同年11月の世界選手権を欠場。

20秒、1発勝負。

 後に続く選手たちを側面からサポートしたいという気持ちが生まれたのは、トランポリンがいかに過酷な競技であるかを身に染みて知っているからでもある。

 伊藤は言う。

「トランポリンは1発勝負。やったことの7割が報われない競技であり、9割がメンタルでやられる競技です。なぜなら、どれだけたくさん練習しても、20秒間にやる10個の技の中で1つでもミスすると終わりであって、やり直しはききません。4年間練習してきても20秒しかチャンスがない。一瞬で無になってしまうんですよ」

 そもそも五輪の出場枠は全世界で男女各16人。1カ国最大で男女各2人しか出られない。世界選手権では団体戦や2人1組で戦うシンクロなどがあるが、五輪の種目は個人戦のみだ。

「練習は3時間を1日2回。年に300日として4年間やると、7200時間。それでも良い結果が出る人は(メダルを取る)3人だけです」

世界選手権では親友・内村を呼ぶ?

 しかし、それでも辞められないのがトランポリン。空中に高く舞い上がり、宙返りしながら技を繰り出す面白さは底知れない。

「やっている全員が笑顔になるのがトランポリン」。

 誰よりも魅力を知っているのも伊藤である。

 今年は11月28日から12月1日まで東京五輪会場となる有明体操競技場で五輪のテストイベントを兼ねた世界選手権が開催される。まずはそこに多くの人に足を運んでもらうためのプランを考えていきたいという。

「トランポリンは野球やサッカーのように点が入れば勝つという競技ではありませんから、分かりやすくして一般の人が楽しめるようにしなければいけない。会場の演出も必要です」と話し、トランポリン好きで知られる同学年の親友、内村航平の名を挙げて、「11月の世界選手権にゲスト解説などで来てくれるとうれしいんですけどね」と、夢プランも披露した。

【次ページ】 トランポリンをみんなで盛り上げたい。

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