フランス・フットボール通信BACK NUMBER
結局は、持ってるか持ってないかだ!
ペレと会ったムバッペの強烈な印象。
text by
パスカル・フェレPascal Ferre
photograph byHublot
posted2019/05/10 07:00
17歳でW杯を制したペレと、19歳で制したムバッペ。歴代の“第二のペレ”達の中でもムバッペは特にお気に入りだ。
「『持っている』かどうかだ」
彼を目の前にして、歴史的なモニュメントに向かい合っているのだと感じた。
自分がとても小さな存在で、まるでどうすれば頂上へアタックできるのかわからない山の麓に立っているかのようだった。そして会見で記者たちが目を輝かせているのを見たとき、隣に座る彼に魅了されているのは僕だけじゃないと確信した。ペレとはそれほど魅力的な存在で、放つオーラは半端ではなかった。
彼のいる空間は、すべて彼で満たされているかのようだ。
意識してできることじゃない。「持っている」かどうかだ。
何も話していないときですら、その瞬間を濃密に感じている。彼を見ているだけですべてが満たされる……。
「彼の笑顔を僕は一生忘れないだろう」
対面したのは小さな部屋だった。メディアの要望と公開の義務があるのはわかっていたけど、僕のわがままでどうしてもふたりだけで会いたかった。彼と親密な時間を過ごしたかったんだ。
彼もそれをわかって受け入れてくれた。彼のような人物とは生涯にそう何度も会えるわけじゃない。せっかくの機会を最大限に利用するべきだろう。
彼が滞在するホテルに着くと、誰もが僕のために扉を開けてくれた。でも、彼が待つ部屋の前に立ったとき、最後の扉は僕が自分で開けた。一刻も早く会いたかったからね。
僕が入っていったとき、彼が僕に向けた笑顔を僕は一生忘れないだろう。
彼は誰かと話していたけど、その人物に部屋を出ていくように言った。ふたりきりになって対話が始まった。僕は胸がいっぱいだった。
至福の瞬間はずっと続いた。
心も強く打たれた。
自分が本当にあの場にいたのか、実は今も半信半疑なんだ。本当に考えられないことだからね。