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メッシに尽くす最強の囮・スアレス。
CL無得点でもバルサに不可欠な男。 

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寺沢薫

寺沢薫Kaoru Terasawa

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photograph byGetty Images

posted2019/04/17 17:30

メッシに尽くす最強の囮・スアレス。CL無得点でもバルサに不可欠な男。<Number Web> photograph by Getty Images

メッシという天才が横にいる。それだけでも重圧は大きいはずだが、スアレスはしっかりと自らの仕事をしているのだ。

一瞬を見逃さないメッシの才能。

 ビルドアップを試みる左サイドバックのアシュリー・ヤングに対し、ラキティッチがしつこくフォアチェックをかけていく。エルネスト・バルベルデ監督の下では引いて守るリトリート守備も増えたバルサだが、ここぞの場面ではやはり前から仕掛けてくる。

 ユナイテッドに対抗する“前プレス返し”でヤングのキックがラキティッチに引っかかると、一瞬だけこぼれたボールをバルサの10番は見逃さなかった。

 ボールを拾ったメッシは鋭いステップでフレッジをかわして中に切り込むと、左足を一閃。強さ、コースとも完璧な低い弾道のシュートがGKダビド・デヘアの牙城を破り、16分、試合の主導権とは裏腹にバルセロナが先制点を挙げた。

 試合開始直後はユナイテッドの攻勢に面食らった様子があったバルサだったが、この1点で随分と落ち着いて、いつものようにボールが回るようになった。ただ、それでも時間はたっぷり残っていたし、ユナイテッドとしてもまだ仕切り直しは可能だったはずだ。

メッシはマンUの天敵だった。

 しかし、この男は決してそれを許さない。20分、再びメッシ。

 セルヒオ・ブスケッツの縦パスを受けたフィリペ・コウチーニョがドリブルで仕掛けると、彼が潰れたこぼれ球をひょいと拾って、今度は右足を振り抜いた。

 得意でない方の足から放たれたシュートなので1点目と比べれば完璧には程遠いものだったが、ここでユナイテッドの絶対守護神デヘアにまさかのミス。ボールは名手の脇の下をスルリと抜け、ネットに収まった。

 強気に仕掛けたユナイテッドと、それをいなしたバルサ。結果的に、この開始20分の攻防で試合の大勢は決した。

 思い返せば、ユナイテッドはバルサと戦った直近の2対戦、'08-'09シーズンと'10-'11シーズンのチャンピオンズリーグ決勝でも、メッシにやられている。バルサが2-0で制した'09年は綺麗なヘッドを決められた。そしてバルサが3-1で勝利し、メッシがマン・オブ・ザ・マッチに輝いた'11年には、今回と同じように左足で鋭いミドルを突き刺された。

 アレックス・ファーガソン対ペップ・グアルディオラの時代から、やっぱりユナイテッドにとってメッシは天敵中の天敵なのだ。

【次ページ】 GK、最終ライン、中盤とも万全。

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