ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
メッシに尽くす最強の囮・スアレス。
CL無得点でもバルサに不可欠な男。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/04/17 17:30
メッシという天才が横にいる。それだけでも重圧は大きいはずだが、スアレスはしっかりと自らの仕事をしているのだ。
GK、最終ライン、中盤とも万全。
そのメッシは言わずもがな、この夜のバルサは先発した選手たちが総じて充実したパフォーマンスを見せていた。
GKのアンドレ・テア・シュテゲン、センターバックのジェラール・ピケとクレマン・ラングレの落ち着いた後方からのビルドアップはもはや職人技だったし、ジョルディ・アルバとセルジ・ロベルトの両サイドバックはこの日も効果的な攻撃参加が光った。
中盤ではボール支配率63%のチームでパス本数の1位と2位を記録したブスケッツとラキティッチが相変わらずの安定感で、ポゼッションワークの潤滑油として機能したアルトゥールはポール・ポグバ相手に一歩も引かない素晴らしい仕事ぶりを見せた。
ラ・リーガでは悩めるフィリペ・コウチーニョも、61分にリバプール時代を彷彿とさせるビューティフルゴールを決めただけでなく、随所で高度なテクニックを見せて相手を翻弄し、交代で退く際にはサポーターに拍手で送られた。
スアレスだけどこか苛立っていた。
そんな中で、1人だけ浮かない顔の選手がいた。ルイス・スアレスだ。国内ではすでに20ゴールを達成してメッシに次ぐリーグ得点ランク2位につけるスアレスだが、実は今季のCLでは今回が8試合目の出場だったが、未だノーゴール。最後にCLでスコアボードに彼の名前が載ったのは'18年4月4日のローマ戦である。
かれこれ1年以上、欧州最高峰の舞台ではゴールから見放されているのだ。
リバプール時代の宿敵だったユナイテッドと戦う中でも、スアレスはどこか苛立ちを抱えたままプレーしているように見えた。
ホームとアウェーの2試合を通じて、スアレスは1本も枠内シュートを撃っていない。ファーストレグではメッシのクロスに合わせて決勝点につながるヘッドを放ったが、ルーク・ショーのオウンゴールと判定された。
セカンドレグもシュートは終了間際の89分に狙ったループシュートの1本だけで、それも枠の上に外れている。相手の執拗なマークに遭い倒されるもファウルをもらえない場面も多く、フェリックス・ブリーヒ主審に文句をつけてイエローカードをもらった場面もあった。