球体とリズムBACK NUMBER
マリノスの“裏の番人”はCBチアゴ。
仲川並みの俊足で潰すピンチの芽。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/04/17 08:00
好調マリノスを支えるCBチアゴ・マルチンス。ハイライン戦術のサッカーにはチアゴの速さは欠かせない。
重鎮フレッジ、新鋭ビニシウスらと対峙。
そんなスポーツ一家に生まれたチアゴは、母国の最多リーグ(全国選手権)優勝を誇るパルメイラスで10代のうちにプロデビューを飾った。その後は負傷離脱や他クラブへの期限付き移籍を経て、2016年には所属元でリーグ優勝に貢献。
昨年8月に来日するまで、ブラジル全国選手権やリベルタドーレス杯のピッチを踏み、フレッジ(クルゼイロ)やロビーニョ(現イスタンブール・バシャクシェヒル)、カルロス・テベス(ボカ・ジュニオルス)、ビニシウス・ジュニオール(現レアル・マドリー)ら、元代表の重鎮から早熟の天才ドリブラーまで、様々な一線級と対峙してきた。
「みんなすごかったけど、一番厄介だったのは、フレッジだね。経験が豊富で、体も強くて。スピードはそんなにないんだけど、位置どりや動き出しが巧みだから、気がつけば先手を取られている。熟練者のなせる技だ」
欧州は夢、今はマリノスに集中。
チアゴの経歴やパフォーマンスを見れば、王国ブラジルのエリートプレーヤーにも思えてくる。そんな選手なら、欧州へステップアップしてもおかしくないが、彼は昨夏の横浜行きが正解だったと捉えている。
「ここでは自分が親しんできたものと異なるスタイルに触れることができ、多くを学んでいるよ。特に今のチームではパスの繋ぎ出しの部分を強化できていると思う。それにチームメイトやスタッフ、サポーターにとても温かく迎えてもらった。自分は期限付きで加入したわけだけど、今はマリノスでしっかり活躍したい。そこに集中しているよ。
欧州でプレーすることは子供の頃からの夢のひとつだけど、今は先のことは一切考えずに、足元を見つめてやるべきことをしっかりやるだけさ」
ひげを蓄えた優秀なアスリートはこれまでの過程で、フットボールの世界の厳しさを見てきたという。だからこそ、地道な努力が必要だと実感しているようだ。
「ブラジルでプロの選手を続けていくのは、本当に大変なんだ。やっと契約できたと思ったら、いきなりクラブがなくなってしまったりする。それにライバルは本当に数えきれないほどいるからね。だから、自分は日々を大切にする。一日も無駄にはできないよ」