球体とリズムBACK NUMBER
マリノスの“裏の番人”はCBチアゴ。
仲川並みの俊足で潰すピンチの芽。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/04/17 08:00
好調マリノスを支えるCBチアゴ・マルチンス。ハイライン戦術のサッカーにはチアゴの速さは欠かせない。
日本語を交えたコミュニケーション。
では、今季開幕戦から共に全試合にフル出場している相棒の畠中とは、どんな風にコミュニケーションを取っているのか。日本語? それともポルトガル語?
「日本語を少し、英語を少し、あとはジェスチャーだったり。シン(畠中)はもっとも近くにいるチームメイトのひとりで、毎日トレーニングや試合で一緒にやっている。だから今となっては、ひと声かけたり、目を合わせたりするだけで分かり合えているよ」
高い最終ラインの上げ下げに関しては、「誰かひとりがコントロールするわけではなく、ディフェンス陣全員でお互いに声を掛け合っている」という。
13日の名古屋戦では同胞の元セレソン、ジョーとマッチアップ。「クオリティーが高く、強さもある難しい相手」ではあったが、タフなマークで自由を奪い、PK以外に失点は許していない。ただそれは自分だけの働きではなく、「GKを含め、周りと声を掛け合った」からこその成果だと言い、とかくコミュニケーションを強調する。
「だから試合後はいつも声が掠れているの?」と訊くと、「生まれつき、こういう声をしているんだ(笑)。でもたしかに試合ですごく声を出していたから、今はなおさら嗄れているのかもね」とスカッとした笑顔で答えてくれた。
2004年以来のJ1制覇へ。
最終ラインも整い、順調な滑り出しを見せる横浜FMは今年こそ、目に見える勲章を手にしたいはず。最後のタイトルは'13年の天皇杯、その前は'04年のJ1まで遡らなければならない。昨季はリーグカップで決勝に進みながら、湘南ベルマーレに敗れてタイトルを目前で逃している。チアゴもそのファイナルにはフル出場しており、悔しさは忘れていない。
「日々の練習や試合からチームの成長をひしひしと感じている。仲間と刺激し合い、互いに高め合えているよ。僕は目の前の試合に一つひとつ集中して臨んでいる。けれど今年こそ、何か重要なものを手に入れられるのではないかと自分でも期待しているんだ」
クールな表情を見れば、それが大言壮語ではないとわかる。掠れた声で仲間と通じ合い、群を抜く俊足でピンチの芽を潰す王国産の守備者が、マリノスを栄光の航路に導いていく。
そんな未来を期待しているのは本人だけではないはずだ。