ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
新日本MSG大会に現地ファン総立ち。
オカダの姿がホーガンとダブった!
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byNEW JAPAN PRO-WRESTLING
posted2019/04/09 17:30
MSGでも抜群の存在感を発揮したオカダ・カズチカ。現地の観客もレインメーカーポーズで応えた。
猪木時代とは異なる「G1 SUPERCARD」。
ただ、猪木時代に新日本のレスラーがMSGに登場したのは、新日本プロレス営業本部長で今年レガシー部門でWWE殿堂入りした新間寿と、WWEの先代会長ビンス・マクマホン・シニアとの信頼関係から、新日本のレスラーの“箔付け”のためにMSGの舞台を利用させてもらったという側面も強かった。
現地ニューヨークのファンが新日本選手の登場を求めたというより、WWEの興行を借りた、日本向けのテレビ撮りという側面もあったのだ。
それに対し、今回の「G1 SUPERCARD」は、1万6000人以上の“新日本プロレスファン”をMSGに集めたことに大きな意味合いがある。かつてWWEの母屋を借りていた新日本が、いまは堂々とその心臓部に進出し、自力で超満員の観衆を集めるまでになったのだ。
あのMSGが新日本ファンで埋め尽くされた光景は、かつてを知る人ほど感慨深かったに違いない。
“おこぼれ”が集まったわけではない。
もちろん、今回のMSG大会の券売のスピードは、WWE年間最大のイベント「レッスルマニア」の前日、同じニューヨーク地区で行われたことも関係しているだろう。毎年、レッスルマニアを目当てに世界中から10万人規模のプロレスファンが開催都市に集まるため、大会数日前から“裏レッスルマニア”と呼ばれるインディーの興行が多数行われ、その恩恵を受けている。
今回のMSG大会も、そんな“裏レッスルマニア”最大のイベントであったことは確かだ。ただし、レッスルマニアの“おこぼれ”を頂戴するかたちでのMSG大会成功かと言われれば、それもまた違うだろう。
この日MSGに集まった観客は、入場テーマ曲のイントロが聴こえてきただけで歓声をあげ、選手の一挙手一投足に大きく反応していた。この盛り上がりかたを見れば、レッスルマニアのついでに観にきたわけではなく、ほとんどの人が“新日本プロレス”が観たくて来た熱心なファンだとわかる。
新日本とROHは、昨年もレッスルマニアの前日、開催地のルイジアナ州ニューオリンズで興行を開催し、6000人(超満員札止め)という始まって以来の観客を動員したが、今回はその3倍近い観客を集めてみせた。アメリカでも新日本のファンが急激に増えている証拠だ。
そしてWWEのセカンドブランドであるNXTは、2017年からレッスルマニア前日の土曜日にビッグイベント「NXT Takeover」を開催していたが、今年は2日前の金曜開催となった。これは新日本MSG大会との“直接対決”を避けたとの見方もされている。
現地での新日本プロレス人気は、アメリカマット界にも確実に影響を与え始めているのだ。そして、その影響力は今後、さらに増していくことだろう。MSGの異常なほどの盛り上がりは、それを確信させるほどのものがあった。