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MGC優勝者が東京五輪に行けない?
国際陸連の「後出しじゃんけん」。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byYuki Suenaga
posted2019/04/07 11:00
現在の規定のままだと、日本記録保持者・大迫傑がMGCで優勝をしても、五輪に出場できない可能性がある。
もうひとつの理由は記録の不正?
2つ目は、一部の国などで記録の不正が疑われたため。
これはリオ五輪の前から何度も話題になっていた。国内の大会で参加標準記録を出していても、五輪や世界陸上などで全く結果を出せない選手が多かったり、戦う状況にさえない選手もいたため、一定期間に安定した結果を出した選手を選ぶランキング制が採用された。
いずれにしても影響を被るのは選手で、特にマラソンへの影響が大きく、日本も例外ではない。
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東京五輪のマラソンの選考に際し、日本陸連は革新的ともいえる代表選考レースMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)を創設した。
2017年夏からの2年間に、決められた国内大会で設定タイムを突破した選手などが、9月のMGCへの出場切符を獲得。MGCで優勝した選手(条件によっては2位も)が“自動的に”東京五輪の出場権を獲得するとされた。
公平かつ公正な選考をするためにMGCが創設され、そこで代表権を獲得すれば東京五輪まで十分な準備期間をとれることもあり、選手側に取っても選ぶ側にとってもプラスな制度だと言える。
水を差した国連陸連の決定。
しかし、今回発表された国際陸連の参加標準記録が、スムーズな選考に水を差す可能性が出てきた。
国際陸連の設定した参加標準記録は男子が2時間11分30秒、女子が2時間29分30秒。このタイムを2019年1月1日から2020年5月31日までに突破することが条件づけられている。
MGC本戦への参加資格を得ている男子30選手、女子14選手のうち、これらの条件をクリアしているのは、今年1月以降に行われた選考レースで上位に入った男子9選手、女子6選手。つまり、この選手たちはアドバンテージを持ってMGCに臨むことができる。一方、残りの選手は順位だけではなく、同時に参加標準記録を突破しなければいけない状況になった。