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ロッテ藤原恭大「1つでも先の塁を」。
開幕スタメンで刻んだ記録と記憶。
posted2019/04/03 11:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Kyodo News
今ならば、あの発言が謙遜ではなく自己俯瞰していたのだとはっきりわかる。
「世代最強」と謳われていた昨年の大阪桐蔭において、藤原恭大は根尾昂(中日)と並ぶチームの顔だった。昨夏の甲子園では4番として打率4割6分2厘、3本塁打、11打点と、打撃3部門でチームトップのパフォーマンスを示し、史上初となる2度目の春夏連覇を支えた。走攻守と三拍子で出色の能力を発揮し、最強チームの中軸を務める藤原ではあったが、人が大いに関心を寄せていたのは、通算32本塁打を誇る長打だった。
しかし藤原は、そういった目をやんわりと否定するように、こう話していたものである。
「歴代の4番のなかでは非力なほうなんで。自分は内野の間を抜く打球だったり、右中間、左中間を破ってツーベース、スリーベースを狙うバッターだと思っています。持ち味の脚を活かして、1つでも先の塁を狙うバッティングを心がけています」
藤原が標榜するその打撃は、ロッテのドラフト1位として入団してからも息づいていた。
54年ぶりの開幕スタメン。
1965年の山崎裕之以来、チーム54年ぶりとなる高卒新人での開幕スタメンを掴んだ、3月29日の開幕戦。
3打席凡退で迎えた7回の第4打席、楽天・青山浩二の外角スライダーを逆方向に放ったゴロが三遊間最深部に飛ぶ。50メートルの最速5秒7。野手の間を狙い、脚で先の塁をもぎ取るスタイルで記録したショートへのプロ初安打。それは、チーム高卒新人初の開幕戦安打でもあった。
試合後、藤原はプロとなった今も、この1打を特徴だと言い切った。
「きれいなヒットではなかったですけど、ああいうのがこれから生きてくると思います。脚で稼ぐっていう自分の特徴を出せました。ボールを引っかけてセカンドゴロにならなかったのは成長したというか、いいヒットだったと思います」