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憲剛、大島、守田、そして田中碧。
フロンターレ中盤の系譜にまた新星。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/03/24 11:30
大島僚太、守田英正、中村憲剛……実力者が数多い川崎のボランチの中で起用される田中碧は、今こそ見たい注目株だ。
スルーパスでいきなりアシスト。
前半4分、相手のビルドアップに対して、高い位置からのプレスにうまく連動し、GK飯倉大樹から喜田拓也に入る縦パスがずれたところをインターセプト。組み立てのためにいびつになっていた相手陣形のバランスの悪さを見逃さず、絶妙ななスルーパスを通す。
配球先にいたレアンドロ・ダミアンは絶妙なループシュートを放ち、あっさりとゴールネットを揺らしたのだ。
「チームの狙い通りに、前から奪いにいくというのは意識していました。相手が繋いでくるチームなので、前から行く。そういう意味では、奪って縦に早く展開することで点を取れたのは良かったですね」
最高の入り方ができたことで、その後も自信を持ってプレーを披露。ボールを持てば、コンパクトなエリアでも軽快なパスワークを展開し、知念慶やレアンドロ・ダミアンが前線でキープする時間を作れば、自慢の機動力で相手ゴール前に迫るダイナモぶりも発揮した。
終了間際の失点で感じた責任。
守備でも魅せる。前半終了間際のマルコス・ジュニオールとの局面勝負では、鮮やかにボールを刈り取った。相手の足元にボールがあったとしても、自分の間合いに絶妙に引き込んでボールを奪ってしまうのは、田中の真骨頂だ。
後半も強気のプレーでチームを支え続けると、試合終盤には再びレアンドロ・ダミアンのゴールで勝ち越し。今季リーグ戦初勝利目前かと思われたが、ラストワンプレーで与えたCKで失点し、同点に追いつかれた。試合後のミックスゾーンに現れた田中碧に、笑顔はなかった。
「最後にやられたので、なんとも言えない。あれがなければ勝てたし、自分の責任だと感じてます」
彼が「自分の責任」と口にしたのは、同点弾を決めた扇原貴宏のマークが自分だったからである。元々のマーカーは守田英正だったが、途中交代でベンチに退いたため、田中が扇原のマークを担当することになっていたのだ。そこで競り負けたことは、悔やんでも悔やみきれなかった。
勝利こそ逃したが、鬼木監督の評価の高さは、その後のゲームでの起用法が示している。続くACLの第2節・シドニーFCでも先発出場し、我慢強い試合運びで勝利に貢献。さらにガンバ大阪戦でも先発出場。終わってみれば、過密日程の3試合をフルタイムで稼働し続けた。
田中にとっては、唐突なチャンスを掴み、自分の成長を確かめることのできた3試合だったと言えるだろう。