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「東京マラソンでサブスリー」への道。
レースこそ最高の練習だ!
text by
柳橋閑Kan Yanagibashi
photograph byKan Yanagihashi
posted2019/03/22 08:00
東京マラソンのコースを試走した時のワンカット。東京の名所を巡るコースは、写真映えも素晴らしい!?
スピードより持久力の方が伸ばせる。
5000mのスピードがほしいのは山々だが、おそらくそこの伸びしろはほとんどない。それよりも持久力の向上に懸けようと考え、12月は10kmをテーマに練習し、12月29日に「イヤーエンドマラソン in 昭和記念公園」の10km部門に出場した。
じつは公式戦で10kmロードレースに出るのは初めてだ。練習でのタイムトライアルのベストは41分24秒。これまたベストシーズンだった5年前の記録だ。それを乗り越えられるだろうか? あれこれ考えながらアップをしていたら、スタート直前になってしまい、係員に「急いでください!」と言われて、焦ってスタートブロックに猛ダッシュ。
緊張感も相まって、スタート前に心拍数が190bpmまで上がってしまった。練習ではどんなに追い込んでも出ない数字にびっくりしているうちにスタートが切られた。
まわりが猛然とダッシュするのに合わせて走ったところ、入りの1kmは3分50秒だった。「速すぎる!」と慌ててペースを落とすと、心拍数も下がってきて、精神的にも落ち着きを取り戻すことができた。アップダウンがあるコースなので区間ごとにペースがばらつくが、だいたいキロ4分10秒前後で巡航する。
練習時にガーミンのGPSウォッチと心拍計を使ってLT(乳酸性作業閾値。運動強度を上げていったときに急激に血中乳酸濃度が上がる領域)を測定したところ、ペースはキロ4分18秒、心拍数は158bpmと出ていた。レース中盤の心拍数はちょうどそのゾーンにあたり、ペースはそれよりも速い。体感的にはかなりキツイ状態だ。
それでも、ラスト1kmは何だかよく分からない力を体の奥のほうから引っ張り出してきて、4分を切るペースでスパート。フィニッシュタイムは41分20秒だった。自己ベストではあるのだが、これまたVDOTの指標38分57秒には遠く及ばない。
ランニング浸りの自宅合宿状態。
スピード能力を見る限り、サブスリーは絶望である。それでも、このときはまだけっこう楽天的だった。できなかったことを見ればキリがないが、できたこともある。たとえば、このレースでは平均ストライド1.31m×ピッチ185spmという、めざしていた動きが実現できた。「この方向性でスピード持久力をつける練習を続ければ、可能性はあるんじゃないか?」と思えたのだ。
自分の中で新しい扉が開いて、「もっと走りたい」という意欲が湧いていた。その一方で、「そんなに走ってばかりいたら仕事にならないだろう」と戒める声も聞こえてくる。しがない中年市民ランナーとしては難しいところだ。
ただ、その日からちょうど年末年始の休みが始まったこともあり、駅伝中継を見ては自分の練習に出かけるという、ランニング浸りの生活に入った。自宅で合宿を張っているような感覚だ。
結果的に12月の中旬から1月の中旬まで30日間、1日も休まず練習を続けた。もちろん疲れはあったし、体のあちこちに痛みも出た。でも、意欲のほうが勝っていた。映画『ロッキー4 炎の友情』の中で、ロッキーが山小屋に籠もってトレーニングに励むシーンがあるが、気分としてはまさにあの感じである。いま思うと、ちょっと頭が変になっていたような気がする(笑)。