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「山の神」はやっぱりしぶとかった。
今井と神野はなぜ生き残れたか。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2019/03/05 16:30
悪条件の東京マラソンは、選手それぞれのゴール設定も交錯するレースになった。神野はMGC出場権の獲得に成功した。
なぜふたりは生き残ることができたのか。
それにしても、ふたりの山の神はしぶとかった。
なぜ、ふたりは過酷な気象条件で生き残ることができたのか。
私は、「注目されてきたこと」が、最終的に自分の力に変換できるからだと思っている。
今井はいう。
「高校時代の恩師と、オリンピックのマラソンで勝負するという目標を立てました。大学を卒業してからトヨタ自動車九州では、最初からマラソンで勝負するということを大きく掲げてスタートできて、結果が出ないことの方が多いですが、最初に立てたいちばん大きな目標をぶれさせずにやっています」
朴訥としているが、とてもいい言葉だ。
神野はいう。
「学生の時、そして大学を卒業してからも、たくさんの注目をいただきながら、なかなか結果を出すことができませんでした。正直、今回のプレッシャーはハンパなかったですが、このプレッシャーに勝つことができたので、どんなプレッシャーにも対応できると思います。これからは、自分自身の結果に執着できます」
神野と話をするたび、東京オリンピックを控えているがゆえに、「急いでるな」と思ったこともあった。
しかし、それが彼の「栄養」なのだと気づいた。
ふたりの山の神、あの急峻を上ったスピリットは、ハンパない。