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藤田菜七子に沸いたフェブラリーS。
勝った武豊が「ぼくの初GIは6着」。
posted2019/02/18 11:30
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
かつてフェブラリーステークスのパドックを、これほど多くの観客が囲んだことがあっただろうか。スタンド上階のバルコニーにまでびっしり入ったファンが見守るなか、午後3時17分、藤田菜七子が姿を現した。
2019年2月17日。第36回フェブラリーステークス(東京ダート1600m、4歳以上GI)。藤田は、JRA所属の女性騎手として初めてGIに騎乗することになった。
騎乗馬は、前哨戦の根岸ステークスを勝ったコパノキッキング(セン4歳、父スプリングアットラスト、栗東・村山明厩舎)。オーナーで、風水の第一人者のDr.コパこと小林祥晃氏が、パドックで藤田にお清めの塩をかけた。
「それまではあまり緊張していなかったのですが、いざパドックに行くと、緊張感が湧いてきました」と藤田は振り返る。
ときおり小走りになるなど馬のテンションが高かったからか、藤田はパドックではなく、検量室前の馬道でコパノキッキングに跨り、馬場入りした。
「東京競馬場もダート1600mでも騎乗した経験があるのですが、初めてGIに乗って、違う景色に見えました」
ゲート入りする前、藤田がコパノキッキングの首筋と頭を撫でる姿がターフビジョンに大きく映し出された。
最終的に、コパノキッキングは単勝9.4倍の4番人気の支持を得た。
武が作り出したスローペース。
ゲートが開いて、14頭の出走馬が飛び出した。
プランどおり、藤田は無理に騎乗馬を促すことなく、ゲートを出たなりで走らせ、後方に待機した。
ハナを切ったのは、武豊が乗る1番人気のインティ(牡5歳、父ケイホーム、栗東・野中賢二厩舎)だった。
武は、最初の3ハロンの入り方に気をつけようと、管理する野中調教師とパドックで話していた。差し馬が台頭した昨年の34秒1や、一昨年の34秒0のようなハイペースに巻き込まれると苦しくなる。だから、できれば35秒台に抑えたいと思っていたというが、実際につくり出したのは35秒8という、逃げ・先行馬におあつらえ向きの緩い流れだった。