オリンピックへの道BACK NUMBER
吉田沙保里は神様で、お姉ちゃん。
登坂絵莉ら後輩から慕われた理由。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2019/01/14 17:00
1月10日、都内で行なった会見では涙を見せることなく笑顔で引退を表明した。
「精神的な支えになったら」
あらためてその偉大な足跡を思い起こす。
父が自宅内に設けた教室でレスリングを始めたのは3歳のとき。その後順調に階段を上り続け、1998、1999年に世界カデット選手権優勝。2000、2001年には世界ジュニア選手権優勝。
オリンピックは4度出場し、アテネ、北京、ロンドンと五輪3連覇を成し遂げた。リオデジャネイロでは決勝で惜しくも敗れ、銀メダルとなり4連覇とはならなかったが、それでも彼女の獲得したメダルが色あせることはない。
五輪の成績に目が奪われがちだが、真に驚くべきは世界選手権の成績だ。2002年に初めて出場した世界選手権でいきなり優勝すると、以降、最後に出場した2015年まで、実に13連覇を果たしたのである。数々の輝かしい実績に、33年におよぶ長い歳月の濃密さを思う。
その歩みも終わりを告げた今、吉田は今後の抱負の1つをこう語った。
「今、東京オリンピックに向けて全日本もコーチたち、ほんとうに頑張っていますし、選手たちも、もちろん頑張っているので、私も、精神的な支えになったらいいなと思っています」
苦しんでいる後輩の息抜き。
何人かの選手の言葉が思い起こされた。
坂上嘉津季という選手がいる。吉田から見れば至学館大学の後輩であり、世界選手権出場などのキャリアを持つ実力者だ。坂上は北京五輪後、吉田の練習パートナーを務めた。
以前、坂上は言った。
「沙保里さんは、みんなをいろいろなところに連れて行ってくれるんですよ。カラオケだったり食事だったり」
至学館大学での練習は厳しい。あるいは調子が上がらなかったりして苦しんでいる選手がいる。すると吉田は、率先して皆を誘って息抜きさせてくれるのだと教えてくれた。