オリンピックへの道BACK NUMBER
吉田沙保里は神様で、お姉ちゃん。
登坂絵莉ら後輩から慕われた理由。
posted2019/01/14 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
黒のワンピースに白のジャケット。
瞬くフラッシュの中、吉田沙保里は、決然とした表情で壇上に進むと、口を開いた。
「私、吉田沙保里はレスリング選手生活に区切りを付けることを決断いたしました」
リオデジャネイロ五輪銀メダルのあと、選手活動を休止。東京五輪を目指すのかどうか、注目を集めてきた。
結論は、レスリングに勤しんだ日々に終止符を打つことだった。
葛藤はあったという。
「リオのオリンピックが終わって東京オリンピックがある。東京オリンピック出たいなっていう思いもありましたし、自分の父から生前、『退き際は大事だよ』『やっぱり勝って終わることが大事だ』とずっと言われていて。
そういったこともありながら、また金メダルを目指して東京オリンピックに出てほしいという声をたくさんもらったときに、自分もまた頑張らないといけないのかな、頑張ろうかなっていう思いもありながら、すごく迷ってここまで来ました」
若い選手にバトンタッチを。
迷う中、決断に導いたのは、若い世代の姿だった。
「若い選手たちが世界で活躍する姿を見ることも多くなって、この子たちに今後バトンタッチしてもいいのかなっていうふうに思うようになったり、練習をしている中でも、若い子たちの勢いを感じましたし、ほんとうにやり尽くしたなっていう思いもだんだん強くなっていきました」
心が決まると、昨年12月、はじめに母に決意を告げた。そして年が明けて、引退を公表するに至ったのである。