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福岡第一が高校バスケで攻撃無双。
長身+化け物みたいな猛スピード。
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph byYuki Suenaga
posted2019/01/12 09:00
チームを牽引した3年・キャプテンの松崎裕樹(中央後ろ)と2年・司令塔の河村勇輝(中央前)。
対策を練ったはずなのに。
もちろん対戦校は、「福岡第一対策」を綿密に練り、さまざまな策で打ち崩そうとしたが、いずれも返され、突き放された。
中部大第一の常田健監督は「いろんなチームがあの手この手を使ったけれど、見事にリカバリーして原点の速攻で畳みかけた」と脱帽していた。井手口監督に理由を尋ねても、「なんでなんでしょうね。誰が何をやるか全部わかっているし、隠し球はない。こんなに戦いやすい相手はなかろうと思うんですけれど」と涼しい表情だった。
3回戦で福岡第一と対戦し、同校の卒業生でもある飛龍の原田裕作監督はこう分析する。
「映像や客席で見ているのと実際対戦するのとでは、スピードが一段階違う。オフェンスだけでなくディフェンスも、寄りや手を出すタイミングまですべて速い。何よりディフェンスでしっかり我慢して守られるので、シュートを打つことに対して恐怖心を覚えてくるんです。変なシュートを打って外したら、全部ブレイクされるんじゃないか、と。ベンチにいる僕ですらそう感じるので、コートの選手たちはもっとそれを感じているでしょう。
その状態をどうにかしなければと思っているうちに、試合が終わってしまったという印象です。対戦校のスカウティングも相当やっていると思います。寄るだけでなく“捨てる”のもうまい。対戦した監督さんたちとも話しましたが、こぞって『やりたいことをまったくやらせてもらえなかった』と言っていましたね」
ボールを持つと速くなる河村。
オフェンス面におけるスピードの担い手は、2年生の河村勇輝だった。身長172cmの小柄な司令塔は、井手口監督いわく「普段はそうでもないけれど、ボールを持つと足が速くなるタイプ」。トップスピードでドリブル突破しつつ、ゴール下の密集地帯に差し掛かるとさらにギアが上がる。ドリブルで走るだけで会場がどよめく選手というのは珍しい。
いずれの対戦相手も、福岡第一に攻撃権が移ると素早く自陣に戻り、河村の迎撃態勢を整えていた。
しかし河村は守れても次に走り込んでくる松崎裕樹や古橋正義を止められない。井手口監督はこれも「なんででしょうね」と首をかしげたが、原田監督は河村の存在によるところが多いと考える。
「河村が速すぎて松崎や古橋のマークマンも目が離せないんです。さらに河村はマークマンが絶対対応できないようなタイミングで彼らにパスを出す。2人も河村がしっかりパスを出してくれることをわかっているから、自信をもってフルスピードで走ってこられます」