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苛立つガットゥーゾが解任の危機。
副首相の“口出し”と故障者続出。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/12/26 18:45
2017年の11月にミランの監督に就任したガットゥーゾ、昨シーズンはリーグ戦6位で、コッパイタリアでは準優勝。
“カカの再来”を獲得したが。
ガットゥーゾに愛するミランを見離すつもりはさらさらないが、問題だらけの現状と4位確保に向けたシーズン後半戦にクラブ上層部が大きな危機感を抱いているのは確かだ。
レオナルドSDは、“カカの再来”とも目されるブラジル代表MFパケタをフラメンゴから獲得したが、選手登録が可能になるのは年明けからで、残り1週間もない2018年にガットゥーゾにできることは、細かな戦術修正と練習メソッドの改良ぐらいにすぎない。
今年の晩夏、開幕前に発行された指導者向けのマイナーな専門誌にガットゥーゾのインタビューが載っていた。インタビュアーは監督ライセンス講習時代の同期生で、内容は精神論より技術的なメソッド解説がほとんどを占めており、「パッシング・ドリルス」と呼ばれるアスリート能力を高めるための練習方法をバリエーション豊かに解説するその細かな理論に驚かされた。
「俺も昔、過激論者だったが」
現役晩年、目の病気で長期欠場した後、復帰するために休みも返上、「給料もいらない」と練習に打ち込んだかつての“闘犬”は、インタビューの中で語っていた。
「俺も昔、過激論者だった。何でも徹底的にやりさえすれば解決すると考えていた。だが、そいつは間違った考えなんだよ。自分が抱える選手たちは俺自身とは性格も根性もちがう。25人いたら25人、どんな人となりなのか理解しながら正直に接するしかない。俺は選手一人ひとりの兄貴分なんだ」
インタビューの中で理論を語るガットゥーゾは「実戦で役に立つ練習ばかりやっているのさ」とどこか誇らしげだった。
だから、理想のサッカーを実現させたくても戦力が整わない悔しさを彼は誰よりも噛み殺しているにちがいないと思う。
フィオレンティーナ戦でリーグ戦での無得点試合は3戦連続になった。ミランにとって2001年以来なかった不名誉だ。