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苛立つガットゥーゾが解任の危機。
副首相の“口出し”と故障者続出。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/12/26 18:45
2017年の11月にミランの監督に就任したガットゥーゾ、昨シーズンはリーグ戦6位で、コッパイタリアでは準優勝。
深刻すぎる中盤の脆弱さ。
そして、何より深刻なのが中盤の脆弱さだ。
世界最高の守備的MFだった親分は、最終ラインへのフィルターとなり、アタックへの端緒となる中盤の重要性を嫌と言うほど理解している。
司令塔MFビリアとMFボナベントゥーラのアラサー・コンビは揃って長期離脱中。代わりに中盤の新たな防波堤として抜群の機動力をもつMFケシエとMFバカヨコの2人が機能し始めた矢先、彼らは若さゆえにボローニャ戦で無用な退場と警告処分を受け、続くフィオレンティーナ戦での欠場を余儀なくされた。
苦し紛れのガットゥーゾは、今季のリーグ戦出場時間わずか65分間のMFマウリを中盤の底に置き、DFカラブリアを未経験のサイドハーフで先発起用した。
彼らは懸命に相手のチャンスを潰し続けたが、決勝点のシュート直前、FWキエーザから振り切られたのは慣れないポジションで疲労困憊したカラブリアだった。
4-3-3でキックオフに臨んだミランは、67分から4-4-2にスイッチした。しかし、ベスト布陣を長く組めていない影響で基本的な動きしかできないガットゥーゾのチームの出方は、相手チームに読まれ切っている。
今のミランには何の怖さもないのだ。
ベルルスコーニ時代からの歴史。
「引き分けられたら御の字だろう」
フィオレンティーナとの試合前、サルビーニによる皮肉めいた予想は悪い意味で的確だった。
政治家とサッカーの最たる例といえば、かつて右派連合を率いてイタリア首相の座にあったミランの帝王ベルルスコーニだろう。
今から18年前、国政を仕切る立場にあった彼はEUROベルギー/オランダ大会で準優勝したイタリア代表にケチをつけた。
国政を仕切る立場にある人間から公然と采配批判された代表監督ゾフは耐えがたい侮辱を受けたと激怒し、辞任の道を選んだ。当然、代表チームは一時混乱した。
ベルルスコーニは去ったが、ミランにはサルビーニという厄介なVIPが居座り、指揮官を悩ませている。