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苛立つガットゥーゾが解任の危機。
副首相の“口出し”と故障者続出。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/12/26 18:45
2017年の11月にミランの監督に就任したガットゥーゾ、昨シーズンはリーグ戦6位で、コッパイタリアでは準優勝。
3、4バックとコロコロ変更。
22日の17節フィオレンティーナ戦では、73分に相手FWキエーザの低目の一撃で失点した後、反撃らしい反撃もできず力なく敗れ、サン・シーロにブーイングが降り注いだ。親分の表情は硬い。
5位に留まっているとはいえ、今のチームは重症だ。
まず、守備陣の故障者大量発生で最終ラインが安定しない。
主将ロマニョーリは肉離れで約1カ月の休場から復帰したばかり。ユベントスから獲得した期待の若手DFカルダーラは、開幕から断続的に筋肉系の故障に見舞われ、未だにリーグ戦出場時間は0分だ。
DFムサッキオは膝靭帯を痛め、DFストゥリニッチには心臓疾患が見つかり戦線離脱中。使えるセンターバックがいなくなり、サイドバック職人アバーテのコンバート起用で急場を凌ぐ有様だ。
3バックか4バックか、コロコロと変わる戦術に選手たちのプレーから自信が失われている。
イグアインの乱心とスランプ。
2番目の問題はFWイグアインのスランプだ。
フィオレンティーナ戦でも不発だったエースの無得点試合は連続8試合になった。イグアインは2013年夏にイタリアへやってきて以来最悪のスランプにはまっている。
イグアインの得点能力に疑いの余地はない。だが、C・ロナウドを獲得したユーベから“追い出された”と感じているイグアインは、古巣への意趣返しに気負うあまりメンタルコントロールが疎かになり、感情的になりやすいという弱点が顕著になっている。
退場処分を受けて取り乱し、レフェリーに食って掛かった12節ユーベ戦がまさにその例だ。
ちなみに、このときもサルビーニ副首相はエースFWの失態に「出場停止が2試合だけとは少なすぎる」と発言している。彼なりのチーム愛の表現なのだろうが、トゲある一言はイグアインと指揮官を苛立たせただけだった。
親分ガットゥーゾが背番号9を背負うアルゼンチン人ストライカーに期待するのは、ゴールよりも困難な状況でもチームを引っ張っていくリーダーシップだ。
それを本当に理解し行動で示さなければ、レンタル中の身であるイグアインは来夏の移籍市場でミランに買い取りオプションを行使されず、恥辱に塗れながらユーベへの出戻りを余儀なくされる可能性もある。