オリンピックへの道BACK NUMBER
全日本を制した坂本花織の気迫。
「跳ぶから観てろよ、って」
posted2018/12/26 17:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
演じきった瞬間、右手を激しく宙に叩きつけるように手ごたえを示す。
得点が出た瞬間には、「え、えーっ」と目を見開くと、両手で顔を覆った。
2018年12月23日、全日本フィギュアスケート選手権女子フリー。同大会初優勝と世界選手権代表を決めた坂本花織は、いつものように豊かな感情とともに、喜びを表した。
ショートプログラムで宮原知子に次ぐ2位につけ、迎えたフリーは、昨年の大会に続く、最終グループ、最終滑走。
オリンピックイヤーだった前回は、五輪代表をかけての重圧の中で臨んだ。
今回もまた、プレッシャーは大きかった。
他の選手全員が滑り終えて、220点台というハイスコアを紀平梨花、宮原、三原舞依の3人が出していた。
坂本が今シーズンの最大の目標とする世界選手権の出場枠は3だが、簡単に超えられる点数ではない。ミスが許される状況ではなかった。
自己ベストを大幅に越えて優勝。
だが、「1年間を無駄にしたくない、死ぬ気でやるしかない」と、重圧を振り切る。
本人は「完璧じゃなかった」と振り返るが、冒頭のトリプルフリップ-トリプルトウループの連続ジャンプから、しっかり決めていく。
スピン、そして苦しんできたステップはすべてレベル4を獲得。
そればかりではない。昨シーズンよりもつなぎはきめ細かくなり、繊細な振り付けが『ピアノ・レッスン』の曲と符合し、見事な演技を披露する。
すると、国際スケート連盟非公認ながら、今シーズンのフリーの自己ベストである10月のスケートアメリカで出した142.61を大幅に上回る152.36をたたき出す。総合得点でも228.01で、優勝を飾ったのである。