オリンピックへの道BACK NUMBER
全日本を制した坂本花織の気迫。
「跳ぶから観てろよ、って」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2018/12/26 17:30
左から中野園子コーチ、坂本花織、グレアム充子コーチ。この優勝で坂本は、平昌五輪からさらに成長したことを証明した。
ついに演技構成点で高い評価が!
この優勝は、総合力を向上させた賜物と言ってよかった。
「コンテンツシートを見たら、下の点数が初めて70点を超えていて……ブラッシュアップした成果がちゃんと出たのかなって」
と、自身でも成果としてあげるように、演技構成点で高い評価を得たことも成長を物語っている。
それは今シーズンの歩みをも示している。
昨シーズンが終了したとき、新たなシーズンの青写真をこう語っていた。
「今シーズン頑張ってきたみたいに、自分に甘くならないようにどんどん自分を追い込んでいって、レベルアップできるようにしたいと思います。ジャンプは今のままで、表現力とか必要になってくると思うので、スケーティングスキルをもっとあげていかないと」
言葉だけにとどまらず、練習で着実に取り組んできた。
「跳ぶから観てろよ、って」
表現面では、バレエのレッスンや振り付けの部分のみに集中する練習などに取り組んだ。
ステップ、スピンでも、より細部を突き詰める作業に取り組んだ。
シーズンが開幕すると、出場する大会ではジャンプでミスが出るなど、うまくいかないこともあった。
それでも、自分の変化は感じ取っていた。
「ジャンプ以外も考えられるようにちょっとはなったかな」
全日本では、視線をジャッジへと向けた。
「跳ぶから観てろよ、って」
そこには、かつて、「視線を合わせるのは恥ずかしいです」と、ほんとうに恥ずかしそうにうつむいて語っていた姿はなかった。それもまた、変化であり、進化であった。