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クラブW杯3連覇したマドリーが、
完全復調と太鼓判を押せない理由。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2018/12/25 16:30
トロフィーを手にするセルヒオ・ラモスと喜ぶマドリーの面々。見慣れた光景だが、後半戦の戦いぶりはどうなるか。
CL4連覇は明らかに至難の業。
怪我人が徐々に戻り、カゼミーロが離脱中にアンカーのポジションを射止めたマルコス・ジョレンテの台頭も頼もしいかぎりだ。そして、“世界ナンバー1プレーヤー”のルカ・モドリッチが、ここにきて急速にコンディションを上げてきたのも心強い材料だろう。
しかし、時折眠気を誘うような単調極まりないサッカーで、ここから逆転でリーガの覇権を奪回し、前人未到のCL4連覇を成し遂げられるとは、どうにも思えない。
冬の移籍マーケットで、エデン・アザール(チェルシー)やキリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)のようなビッグネームを獲得できれば、多少なりともスペクタクルは生まれるかもしれない。ただ、フロレンティーノ・ペレス会長のターゲットはあくまでネイマール(パリSG)であり、夏に彼を手に入れるために、冬の出費は極力避けたいとの考えもあるようだ。
だとすれば、ソラーリ監督はもう少し賢く振る舞うべきだった。単調な攻撃にアクセントをもたらせるイスコを、ここまで冷遇する必要が果たしてあっただろうか。たとえ目指すスタイルとは合致しなくても、ジョーカーとして、上手くやる気をくすぐりながら活用する手はあったはずだ。
何よりロナウドがいない。
銀河系時代のマドリーで、ジダンをはじめとしたスタープレーヤーのバックアッパーを務めた経験のあるソラーリだけに、そのあたりの機微は十分に心得ていると思っていた。
仮にイスコが冬のマーケットで放出されれば、それはマドリーにとって大きな損失であろう。マドリーというキャンバスに描かれるのは硬質な直線ばかりで、もはや優美で躍動感に溢れる曲線は見られなくなってしまうかもしれない。
状況は、ラファエル・ベニテスが解任され、ジダンがBチームからトップチームの監督に昇格した3年前とよく似ている。けれど、ソラーリにはジダンのようなオーガナイズ能力もなければ、カリスマ性もない。そして何より、C・ロナウドがいない。
世界一の称号は、三度掴み取った。けれど、これをきっかけに後半戦のマドリーがV字回復を遂げるとは、とてもではないが太鼓判は押せない。