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クラブW杯3連覇したマドリーが、
完全復調と太鼓判を押せない理由。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2018/12/25 16:30
トロフィーを手にするセルヒオ・ラモスと喜ぶマドリーの面々。見慣れた光景だが、後半戦の戦いぶりはどうなるか。
セルヒオ・ラモスが不安定?
3戦連続無失点で、守備が安定したと勘違いしてはならない。リーガ16節終了時点で最下位のウエスカ、19位のラージョに僅差の勝利を収めたに過ぎず、しかも14位と低調なバレンシアも含めたこの3チームは、リーガで総得点がもっとも少ない“貧打トップ3”なのだ。相手の決定力不足に救われた感は否めない。
マルセロとダニエル・カルバハルの両SBが故障を繰り返し、さらに中盤の門番カゼミーロ、最終ラインの貴重なバックアッパーであるナチョも怪我で離脱と、なかなかベストな布陣を組めなかった点は、確かにエクスキューズになるかもしれない。
ただ、個人的に気になるのは、セルヒオ・ラモスのパフォーマンスが安定感を欠いていることだ。1対1の対応が軽く、凡ミスが増え、セットプレーで前を取られるシーンも少なくない。まるでマドリーに移籍したばかりの20代前半の彼を見ているようだ。
隙あらば攻め上がる姿勢は、クリスティアーノ・ロナウドの退団でさらに拍車が掛かったが、それが効果的に機能した場面は数えるほどだろう。CWC決勝ではCKを頭で合わせてダメ押しの3点目を決めたが、今シーズン、PK以外で奪ったゴールは実はこれが初めてだった。“ラモス・タイム”と呼ばれた終了間際に見せる勝負強さも、すっかり影を潜めている。
まやかしのクリーンシート。
ワールドカップでフランス代表の世界制覇に貢献したラファエル・バランも、なかなか調子が上向かない。25歳という年齢的にも、S・ラモスに代わって守備陣のリーダーになっていいはずだが、気迫に乏しく、プレーに迷いも見られるなど、ロシアでの彼とはまるで別人だ。
いずれにしても、“まやかしのクリーンシート”に騙されてはいけない。CWCでは鹿島も、決勝で対戦したアル・アインも、簡単に言えば「レアル・マドリー」の威光に腰が引け、その名前をリスペクトしすぎたのだ。