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クラブW杯3連覇したマドリーが、
完全復調と太鼓判を押せない理由。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2018/12/25 16:30
トロフィーを手にするセルヒオ・ラモスと喜ぶマドリーの面々。見慣れた光景だが、後半戦の戦いぶりはどうなるか。
ポゼッション放棄の代償。
現在のマドリーの攻撃は、高いポジションを取る両SBの存在なくして成り立たない。そこを抑えるためにも、勇気をもって前からプレッシャーを掛け続ける必要があったが、しかし、彼らは怖いもの知らずのエイバルのようには攻めの姿勢を貫くことができなかった。
後ろに不安が残るから、攻撃にも迫力と厚みを欠く。人数をかけ、かさにかかって敵陣に攻め込むシーンは滅多にない。カウンターからの失点のリスクを排除するために、ロペテギ時代に習得しようとしたポゼッションサッカーを、ソラーリ監督が完全に放棄した代償とも言えるだろう。
ソラーリが回帰したのは、ジネディーヌ・ジダン監督時代のシンプルで縦に早いサッカーだ。しかし、最後の仕上げを全面的に託していたC・ロナウドが去り、その後釜も補強しなかったのだから、得点力の低下はやむをえまい。
やはり黒子が似合うカリム・ベンゼマはゴールゲッターとしては物足りないうえに調子の波が激しく、ギャレス・ベイルも怪我が多く、CWCの鹿島戦のように散発的にスーパープレーは見せるものの、消えてしまう試合も少なくないのだ。
アセンシオも完全に伸び悩み。
そして、個人的に大きな期待を寄せていたマルコ・アセンシオは、完全に伸び悩んでいる。決定的なシュートがことごとくGKや相手DFにブロックされてしまうツキのなさに、スターへと羽ばたけない、プレーヤーとしての限界もちらついてしまうのだ。
三振かホームランのような偶然性の高いアタックと言えば、少しばかり言い過ぎかもしれないが、崩しからフィニッシュの局面に関しては、個の能力に大きく依存しているのは間違いない。
CWC 3連覇の偉業は称えられてしかるべきだ。とはいえ、このタイトルをもってマドリーの完全復調を高らかに宣言するのは、少々無理がある。逃げ惑うウサギなら簡単に仕留められたかもしれないが、相手が勇猛に立ち向かってくるリーガやCLの戦いではそうもいくまい。