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オジュウチョウサンの有馬記念は?
レース特有の要素がすべて追い風。
posted2018/12/22 08:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
平成最後のグランプリ、第63回有馬記念(12月23日、中山芝2500m、3歳以上GI)のスタートが近づいてきた。
例年にはない面白さと難しさが感じられるのは、障害界の絶対王者オジュウチョウサン(牡7歳、父ステイゴールド、美浦・和田正一郎厩舎)が参戦するからだろう。
今年の7月7日、武豊を新たな鞍上に迎え、福島芝2600mの500万下、開成山特別に出走。約4年8カ月ぶりの平地レースとなったそこを、勝負どころから早めに動いて3馬身差で圧勝した。つづく11月3日に行われた東京芝2400mの1000万下の南部特別も、直線で力強く伸び、半馬身差で勝っている。
そして、平地復帰3戦目が、ファン投票第3位の10万382票を集めて出走権を得た有馬記念となった。
去年、有馬記念前日の中山大障害でレコード勝ちした馬が、1年後にこうして有馬記念に出てくるのだから、不思議といおうか、夢がある。
ジャパンカップならキツいだろうか。
新聞の印は▲や△が少しついている程度で、話題先行と見られているが、はたしてそうだろうか。前走の南部特別でも、「夢より自分の財布」というシビアな見方が最終的には多数を占め、単勝3.1倍の3番人気だった。ところが、ふたを開けてみれば、「オープン馬が条件戦に出たらこういう勝ち方をする」という典型のようなレースになった。オジュウはすでに「常識」を打ち破っている。
これが先月のジャパンカップだったら、おそらくアーモンドアイにちぎられていただろう。オジュウに欠けている数少ない能力のひとつが、絶対的なスピードと瞬発力だからだ。
そのかわり武と、障害レースの主戦の石神深一が口を揃える「首を低くしたまま障害を飛んでしまう」という並外れた柔軟性と、無尽蔵のスタミナ、そして、長らく王者に君臨しつづけた風格を有している。