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オジュウチョウサンの有馬記念は?
レース特有の要素がすべて追い風。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2018/12/22 08:00
有馬記念の枠順抽選会で武豊は1番を引き当てて笑顔を見せた。オジュウチョウサンの走りが楽しみだ。
有馬記念は勝ちタイムが大きく変わる。
有馬記念は、コーナーを6度回り、しかも2周目が内回りコースというトリッキーな中山芝2500mの特性もあって、その年によって勝ちタイムが大きく変わってくる。
過去10年はすべて良馬場で行われたのだが、最も速かった2009年ドリームジャーニーの2分30秒0と、最も遅かった'11年オルフェーヴルの2分36秒0では6秒も違う。
面白いことに、同日、同じコースで行われる1000万下のグッドラックハンデのほうが、2、3レースあとに行われる有馬記念より速い時計で決着することもある。'14年はジェンティルドンナが2分35秒3で有馬記念を勝ったが、その日のグッドラックハンデを、レイズアスピリットが2分33秒8と、1秒5も速い時計で勝っている。また、'11年には、コスモロビンがオルフェの有馬より2秒7も速い2分33秒3でグッドラックハンデを勝っている。
だからといって、ジェンティルやオルフェより速いタイムでグッドラックハンデのゴールを駆け抜けた馬たちが、同じ日の有馬記念に出ていたらどうなっていたかというと、勝負にならずに突き放されるのが競馬というものだ。
舞台設定、中山はオジュウの味方。
競馬は人間の陸上競技と違い、純然たるタイムレースではない。序盤から飛ばす馬がいるかどうか、逃げ馬が内枠と外枠のどちらに入ったかといった、ちょっとした要素で、時計は大きく変わってくる。
グッドラックハンデで速い時計を出した馬たちが、有馬記念に出ていた馬たちと同じ流れのなかに入ったとたん、速く走れなくなるのはなぜか。
それは競走馬としての総合力の差、格の差があるからと言えるのだが、オジュウチョウサンは、絶対的なスピードがないだけで、格においてはここに入っても、普通にトップクラスに入る。前走と前々走のパドックで、オジュウと他馬との間には明らかなスケールの差が感じられた。
タイムにバラつきの出やすい有馬の舞台設定は、オジュウに味方するのではないか。
そして、中山は、オジュウが障害で圧勝してきた舞台でもある。
公開枠順抽選会で、武が、昨年と一昨年のキタサンブラックと同じ1枠(1番、昨年のキタサンは2番)を引いた。外から逃げるであろうキセキを前に見ながら、ロスなく好位を進むことができそうだ。
と、これだけ好材料を並べたのだから本命にしたいところだが、やはり、GIIかGIIIで、平地の一線級と手合わせして、オープン馬同士の「気」のぶつけ合いのなか、ペースに慣れておいてほしかったとも思う。