第95回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
絶対王者・青山学院大学に隙は無し。
東洋大学は「万全」で本大会を迎えられるか。
text by
箱根駅伝2019取材チームhakone ekiden 2019
photograph byShunsuke Mizukami
posted2018/12/27 11:00
東洋大学
<前回大会2位> 17年連続77回目
鉄紺が狙うのは常に「優勝争い」。
真価で王者を“覆せ”るか。
文=生島淳
「優勝争いに絡まないと、試合をしていても面白くないですよね。それは応援をしてくださる卒業生の方々も同じ思いだと思いますし」
東洋大学の酒井俊幸監督は、駅伝では必ず「見せ場」を作る。
前回の箱根駅伝もそうだった。当時1年生の西山和弥が、1区の集団のなかから抜け出して主導権を握り、2区の相澤晃(現3年)がその流れを引き継いで、青山学院大学を抑えて往路優勝を飾った。
簡単には白旗をあげない。それが東洋大学の真髄である。
ただし、そのためには戦略が必要となる。長らく取材をしてきて、酒井監督が指揮する東洋大学の特徴は、「機先を制すること」にあると感じるようになった。それは酒井監督の揺るぎない戦略に起因している。
「“主導権”を握ってこそ、初めてチャンスが生まれると思います。追いかける展開になってしまっては、前半に余分な体力を使ってしまいます。序盤で主導権を握ってこそ、本命を揺さぶることが出来る。ところが、今季はそうした展開に持ち込むことが出来ていません」
絶好調の相澤、集大成の山本。
出雲駅伝では、追いかける立場になった。それでも先頭を走る青山学院大学を最終6区では手の届くところにまで差を詰めたものの、最後は青山学院大学の背中をつかみ損ねた。酒井監督はレースをこう振り返る。
「リードされながらも、選手たちは良く粘ったと思います。ただ、ひとつだけ欲をいうならば、アンカーの吉川(洋次・2年)は青山学院大学に追いついて欲しかった。そこから何か変化が生まれたはずなので」
とは言っても、吉川に逆転のチャンスが生まれたのは、中心となる選手の走りが安定していたからだ。
特に、前回の箱根駅伝では2区を走った相澤は、駅伝の季節を迎えてから絶好調だ。出雲は1区で区間2位、全日本では最長区間となるアンカーの8区を任されて区間賞。どんな区間を任されても充実の走りを見せているのが心強い。
また、4年生の山本修二は4人きょうだいの末っ子で、兄ふたりも東洋大学の陸上競技部出身。
「兄弟で10年以上お世話になってきた東洋大学なので、恩返しのつもりでいい走りをお見せしたいです」
と山本は話す。マツダで活躍する兄・憲二は東京オリンピックの選考レースであるMGCの出場権を獲得している。兄弟そろって駅伝には強く、頼りになる存在だ。