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安部裕葵はレアルすら通過点にする。
19歳らしさより、鹿島らしさを。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2018/12/17 12:15
鹿島にまたしても現れた新星フォワード、安部裕葵(左)。すでに全世代からの注目を集めつつある。
高卒でプロになると決めていた。
安倍は6月にはU-19代表としてロシアへ渡り、日本代表の練習パートナーも務めた。非公開で行われたゲーム形式のトレーニングでは、日本代表側の一員としてプレーしている。鹿島での出場経験が評価された結果だろう。
2017年、広島の瀬戸内高校から鹿島へ加入した。高3のインターハイでのプレーが鹿島スカウトの目に留まったのだ。鹿島は安部と同じポジションの選手にオファーを出していたが、断られていた。高校入学時点で高卒でプロになると決意していた安部にとっては、大きすぎるほどのチャンスだったに違いない。
1年目はリーグ戦13試合272分に出場して1得点。今季は22試合に出場し、1146分と出場時間を伸ばしている。先発出場の機会が増えた結果だ。国内タイトルは逃したものの、ACL制覇を果たしたチームにとって、欠かせない戦力となった。後半戦では守備意識も高くなり、自陣ペナルティエリアでピンチを救う場面も増えた。
リーグ戦2得点には不満げ。
そんな活躍が評価され、Jリーグベストヤングプレーヤー賞も受賞している。それでも、「自分のプレーには満足していない。まだまだ数字が足りない」と喜びとともにそう口にしている。
数字とはすなわちゴール数だ。今季リーグ戦では2得点にとどまっている。守備負担がゴール数に影響しているのではないかと訊くと、「両方やれる選手がトップに行けると思うので、そういう選手になりたい。何が足りないかとか、何をすべきかということよりも、とにかく自分がうまくなるために一生懸命練習をして、ゴールにこだわる気持ちが大事だと思う」と答えた。
その2日後のグアダラハラ戦。イエローカードをもらった直後のことだった。
左の安西幸輝とのパス交換から敵陣へ侵入すると、落ち着いてトラップしたボールをゴールへと蹴りこんだ。会心のミドルシュートは、世界各国でも高い評価を得る美しいゴールとなった。