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安部裕葵はレアルすら通過点にする。
19歳らしさより、鹿島らしさを。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2018/12/17 12:15
鹿島にまたしても現れた新星フォワード、安部裕葵(左)。すでに全世代からの注目を集めつつある。
普段の印象を吹き飛ばすような喜び方。
「何も考えていないです。トラップをしたときに、ああ打てるなと。気持ちよかったですね。あんなにきれいなゴールは多分プロになって初めてだと思うので。この間の練習後の取材で、『数字を残したい』と言いましたね。そういう意識をし、それを口にすることで、(現実として)現れたのは嬉しいです」
歓喜のセレブレーションは、普段の安部らしさを吹き飛ばすほどはじけていた。勝利を決定づける3点目は、終了間際にPKを決められたこともあり、決勝点同様の価値あるゴールだった。
それは安部にとって有言実行のゴールでもあったが、そのシュートの瞬間だけで彼の能力を語るべきではないだろう。ファールで敵の攻撃をブロックしたシーンや相手を2人を背負いながらもパスを繋いだシーンなど、この日の安部のプレーは印象深いものが多かった。ピッチ上のあらゆる場所で見せた勝利と自身の未来に対する執着心が、ゴールという果実に繋がったように感じる。
同世代のスターでは納得できない。
来年にはU-20W杯も控えている東京五輪世代。同世代の選手に刺激を与える存在なのでは、という質問を受けたときの安部は少し不満気に見えた。
「確かにアンダーカテゴリーとかあると思いますけど、僕はそういうアンダーカテゴリーは意識していないので。サッカー選手は年齢の関係ない職業だと思っている。世界的に見れば、もっともっとやらなくちゃいけないと思っています」
20歳以下、23歳以下というカテゴリーではなく、年齢制限のない代表選手たちに刺激を与える存在にならなくちゃいけない。そういう貪欲さが伝わってきた。
準決勝ではレアル・マドリーと対戦する。
「楽しみだなぁというような感じはなくて、違和感ですね、僕は。2年前の試合(クラブW杯での決勝戦。鹿島対レアル・マドリー)は、高校の寮でみんなと見ていました。『鹿島スゲーな。お前ここに入るのか』って言われながら。そしたら、次に僕は戦う“はめ”になった」
安部らしくない少し乱暴な言葉が漏れる。周囲からレアル、レアルと言われることに“違和感”があるのかもしれない。