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ユーベの「史上最強」論争が勃発。
ロナウドの加入でセリエを独走中。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/12/12 11:30
第15節に行われた3位インテルとの注目のイタリア・ダービーも、66分にマンジュキッチが挙げた1点を鉄壁の守備で守り、制した。
イタリアで論理的なのはユーベだけ。
ユベントスの強さとは「ロジカル(論理的)な強さ」ではないか、とつねづね考えている。
“現状がこうだからこう改善すべきで、こうすればこうなるはずだ”という理論通りに物事を運ぶことができるのはユーベだけだからだ。
電車が時刻通りに来ないとか自宅の配管工事に来た業者が水漏れを見逃すとか、不条理や不合理性に取り囲まれたイタリアの日常生活を暮らしていると、理論を現実に変えることができるユベントスというクラブこそ異質であることがわかるようになる。
現在の無敵街道が始まる前、低迷に喘いでいた2011年のユベントス株式会社の総売上は、クラブW杯を優勝したインテルのそれに遠く及ばず、たった1億5600万ユーロに過ぎなかった。
ユーベは経営努力を重ね、7年かけてそれを倍増以上(2017年度=4億1100万ユーロ)にし、イタリアのクラブ史上最多売上記録を更新し続けている。
誰でも真似できるはずなのに。
リーグ随一の守備陣を揃えているから。
欧州屈指の名将アッレグリがいるから。
国内有数の育成部門とスカウト体制が整っているから。
ユーベの方法論は、突き詰めていけば理路整然と「○○だから」と説明することができる。理論だけなら誰もがコピーすることができる。極論すれば、ユーベの強化策は誰にでも、どこにでも応用可能だ。
だが、理論を現実のものにするための実行力とフォーマットとしてのノウハウを持っているのはユーベだけだ。
またユーベは歴史的に世界的スター選手獲得にこだわりを見せたことはほとんどない。一兵卒がユーベに入団し泥臭く戦いながらタイトルを勝ち獲ることで一流になる。それが王者の理論であり約束事だ。ジダンもコンテもそうだった。ユーベはそうやってシーズン毎の最強チームを作り上げてきた。
C・ロナウドは数少ない例外にあたるが、そもそも彼は存在自体が史上稀に見るスーパースター選手だ。