草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
チェンジアップは魔球か劇薬か。
中日・笠原祥太郎へ権藤博の警鐘。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2018/12/06 11:30
笠原は大学3年時に関甲新学生リーグ三振記録を樹立。2017年ドラフト4位で中日に入団。2018年1月に入籍。
笠原もその考えを実感する。
少しだけ遅いストレートが、チェンジアップの役目を果たした。この発想が出てくるのは、権藤氏がストレートも変化球も同じ握りで投げ分ける技術をもっていたからだ。
「私はカーブ、シンカー、チェンジアップにスライダーを投げていましたが、握りは全部同じです。ドン・ニューカムに教わったんですよ。『セイムグリップだ』と。そうじゃなきゃ、走者に握りを見られて指笛で打者に教えられるんだぞってね」
メジャーリーグでMVPに輝き、サイ・ヤング賞の初代受賞者でもあるニューカムは、1962年に中日でプレーした(外野手として)。その大投手から直伝されたのが「セイムグリップ」である。
握りは変えなくても、変化球は投げられる。そんな技術を半世紀以上も前に身につけていた伝説の投手が口にする劇薬説。こうした考えは笠原も聞いたことがあると言った。
「僕のチェンジアップは大学のころから投げてはいますが、それほど打ち取れる球ではありませんでした。でもプロ1年目のキャンプで投げる量を増やしたところ、いつしかキレが良くなったんです。
来年はボールゾーンに落とすだけじゃなくストライクも取れるよう、精度を上げたい。僕の感覚ではストレート以上に腕を振っているつもり。他の投手は真っ直ぐをチェンジの振りに合わせていると聞いたことがあります。なので自分は大丈夫だと信じたいですね」
ストレートよりも強く腕を振って投げている。それが、笠原が劇薬説を跳ね返せると話す根拠だ。この言葉通りに来季に飛躍できたその先に、「TOKYO 2020」での侍入りも見えてくるはずだ。