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「高3の堂安律と比べて足りない」
中村敬斗に響いた宮本監督の言葉。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/12/01 08:00
東京五輪世代として注目される中村敬斗。宮本恒靖監督も手塩にかけて育てている。
「高3の律と敬斗を比べると」
破竹の8連勝を飾っている好調なチーム状態の中で、18歳が出場機会を確保するのは至難の業。この試合で出場停止だった倉田秋に代わってチャンスを得た中村は、宮本監督からこんな言葉をかけられてピッチに送り出されていた。
「(堂安)律が高3の時に残した結果と今の敬斗を比べると足りないよ」
堂安も高校3年当時はトップに絡む機会は少なかったが、J3では別格の存在感で計10得点。一方、中村はJ3で計4得点にとどまっている。
「普通に比べると僕が劣っている。それをストレートに言われて、スイッチが入りましたし、やる気が出ましたね」
若き指揮官の檄に応えたのは1対1で迎えた後半早々の52分である。米倉恒貴のクロスを渡邉千真がダイレクトで合わせるも、長崎の守護神、徳重健太が好セーブ。しかしそのこぼれ球を中村は冷静に蹴り込み、待望のJ1初ゴールを叩き込む。
「1-1なら戦犯だが点を取れば」
実のところ、43分に献上した同点弾はゴール前で相手クロスを豪快に空振りした中村のクリアミスに起因していたが、18歳はこう言ってのけた。
「空振りしてしまって、このまま1-1なら戦犯だなって思いましたけど、点を取ればチャラになると思っていた」
その言葉通り、自らの決勝点で9連勝に貢献した中村だったが、その成長を物語るのは得点場面の勝負強さでは決して、ない。
宮本ガンバでは倉田と小野瀬康介の両サイドハーフのハードワークが生命線だが、中村は自身にとって初めてとなるJ1でのフル出場で、その役割をタフにこなしきったのだ。
総走行距離は両チームを通じて2位で、上を行くのは「スタミナモンスター」藤春廣輝のみ。12.1キロを走り切っただけでなく、スプリント回数もチーム4位。随所で持ち味である鋭いドリブルも見せながら、中村はタフに攻守で上下動してみせたのだ。