セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
優等生クラブ・キエーボと悪役会長。
残留争い常連の強烈なしたたかさ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/11/28 11:00
現会長のカンペデッリ氏。1929年設立のクラブは2001年にセリエA初昇格すると、2007-2008シーズンを除いて、セリエAに残留。
今季3人目の指揮官ディカルロ。
そして、ベテランらしくこう続けた。
「俺たちキエーボは困難には慣れてる。勝つ時も負ける時も、ともに最後まで戦う。それがチームってものだろう?」
今季3人目の指揮官として呼ばれたのは、過去にも2度キエーボのベンチに座ったディカルロだ。
勝手知ったる古巣に帰ってきた彼は「まだ11月だ。順位表はできる限り見ないようにしよう。リーグ戦の道程は長い。もう一度団結するんだ。“キエーボ・スピリット”があれば残留は可能だ」とまずチームに冷静さを取り戻すことに努めた。
13節で新監督の初陣の相手は難敵ナポリとのアウェーゲームだった。惨敗やむなしのはずが、雨中の試合でキエーボの選手たちは奮闘した。ナポリFWインシーニェのシュートを右ポストが阻む幸運も手伝って、相手自慢の攻撃陣を零封し、キエーボは0-0で引き分けた。
戦わずして諦めることはしない。
初戦で強豪から貴重なアウェーでの勝点1をもぎ取った新監督ディカルロは上機嫌そのもので「試合前、選手たちに『ナポリを止めてうちが週末のサプライズになってやろうじゃないか』と発破をかけたんだ」と明かした。
おそらく主将ペリシエの顔には開幕からのストレスフルな数カ月間で深い皺が数本増えたのではないか。それでも彼は“勝点ゼロ”からの脱出に一息ついたようだ。
「たぶん今季初めて勝ちにいった試合だった。もちろんテクニックでもフィジカルでもナポリの方が上だが、勝ちにいくプレースタイルで勝点1を取れたことは大きい。最後まで戦い抜いた結果、降格するのならそれでも仕方ないと正直思っている。だが、俺たちは戦わずして諦めることだけはしない」
“キエーボ不正”の一報を知ったとき、もちろんやったこと自体は褒められたことではないけれど、表では大人しい顔して裏でやることはやるんだな、と彼らの悪知恵に妙に感心してしまった。