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優等生クラブ・キエーボと悪役会長。
残留争い常連の強烈なしたたかさ。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byGetty Images

posted2018/11/28 11:00

優等生クラブ・キエーボと悪役会長。残留争い常連の強烈なしたたかさ。<Number Web> photograph by Getty Images

現会長のカンペデッリ氏。1929年設立のクラブは2001年にセリエA初昇格すると、2007-2008シーズンを除いて、セリエAに残留。

32歳で会長就任の好青年が今や。

“主犯”のキエーボはイタリアサッカー連盟懲罰委員会から、今シーズンの勝点3剥奪とカンペデッリ会長の3カ月職務停止という処分を受けた。勝点を剥奪された地方クラブがA残留に成功した例は甚だ少ない。

「告発を受けてから、私は伝染病感染者のような扱われ方だ。誰も彼もがキエーボに泥を投げつけてくる。クラブの会計収支自体に問題はない。だいたい10代の若手選手への値段設定が公平になるはずがない。主観的な値付けになっても仕方ないだろう?」

 カンペデッリ会長は完全に開き直っている。

 2001年にキエーボがセリエAに初昇格してきたとき、当時32歳だった彼は、奸物ばかりのカルチョ界に現れた好青年と持て囃されたものだ。

 しかし、時の流れとともに彼は好青年から謀略に長けた曲者へと変貌し、セリエAで生き抜く術を身につけたらしい。

「急病」で降格危機回避。

 連盟の懲罰委員会が、事情聴取のためにカンペデッリ会長を召喚したのが8月上旬のことだった。

 その時点で、キエーボへ下されるであろう罰則処分は「昨シーズンの勝点15剥奪になるだろう」と予見されていた。つまり事情聴取を受けたが最後、懲罰委員会によって即処分決定となれば、今季キエーボの戦うリーグ戦がセリエBになっていても何らおかしくない状況にあった。

 セリエAの今季開幕カードは8月18日、他ならぬキエーボ対ユベントスだった。一度始まってしまえば、カンピオナートの結果やクラブ編成を覆すことはほぼ不可能になる。

 キエーボ会長は事情聴取をごねた。「急病につき」延期を願い出たのだ。

 これが了承された結果、事情聴取と裁定は9月に延期され、この時点でキエーボの今季セリエA参戦が確定した。事実、9月に開かれた懲罰委員会では処分の有効性を鑑みて、勝ち点剥奪の罰則対象が昨季から今季に改められている。

 カルチョ界のしたたかさを身につけたカンペデッリの狡猾さによって、キエーボは降格危機を回避した。

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