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吉田輝星と柿木蓮の“深夜ラン”と
新星に大志を託したスタッフの思い。 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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photograph byKyodo News

posted2018/11/26 17:00

吉田輝星と柿木蓮の“深夜ラン”と新星に大志を託したスタッフの思い。<Number Web> photograph by Kyodo News

「少年よ大志を抱け」で有名なクラーク博士像の前でポーズをとる新入団選手。1位吉田と5位柿木は甲子園決勝で投げ合った。

「セリオン」に込めた想い。

 新入団発表と違い、残されている時間は少ない。いくつか候補をリストアップし、旧知の秋田出身者へもリサーチをした。そこで秋田の「ポートタワー」、通称「セリオン」へと一本化したのである。全高143m。秋田県内で一番高い建造物である。

 ファイターズからの「隠し言葉」を身勝手かもしれないが、複数込めている。

 吉田投手の名前にちなみ「秋田県内で『輝』く『星』に、一番近い建造物」である。ほど近い秋田港からは、本拠地となる北海道への航路もある。

 甲子園の準優勝時に金足農業高校のチームカラーであった紫にライトアップされた。高さもあり、秋田市内を含めた広域から、ふと目に飛び込んでくるタワーである。来シーズンから故郷を離れる吉田投手。タワーを目にした時に、秋田県の方々に思い出してほしい。そんな、ささやかな願いもまぶしたのである。

豊平川沿いをランニング。

 冒頭へと、話を戻す。11月23日。新入団発表を終え、球団関係者と保護者らを交えた夕食会が宿泊先のホテルで行われた。すべてのスケジュールを消化した吉田投手と柿木投手は誘い合って、トレーニングウエアに着替えた。厳寒の冬の夜へと飛び出していったのだという。

 イベント続きで不足する練習量を補うように、豊平川沿いをランニングしたのだそうだ。路面は凍結しており、慣れている北海道民でも歩くだけでも注意を払うような状況だった。そのシーンを目にした球団幹部の1人が、声を掛けた。

「走れるの?」

 吉田投手は、このように答えたという。

「秋田生まれなんで、大丈夫です」

【次ページ】 2人は引き返すことなく闇夜へ。

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