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インドリーグの日本人サッカー選手、
久保木優は「ACLでJと戦いたい」。
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph byMinerva Punjab FC
posted2018/11/11 11:30
入団会見で何ともインド的な? 格好の久保木優。この地でACLを本気で狙っている。
サッカー選手を絶対諦めない。
当時すでに24歳で、しかも前十字靭帯断裂という選手生命にかかわる怪我を負っていた青年である。サッカーを諦めて新たな人生を歩んでも不思議ではなかった。知人からも「帰国して普通に就職しろ」と諭された。それでも、久保木は頑なにフットボーラーとして生きることにこだわっていた。
「どんなに厳しくても、サッカー選手であることを絶対に諦めたくないんです。周りを見返してやる、と。日本で何もなし得てない人間が、タイでもダメなら一生浮上できないと、自分に言い聞かせています。根拠のない自信と意地が僕の支えです」
アジアの雑踏の中に埋もれそうになりながらも、必死に“しがみつく”かのような意思を感じさせる言葉が強く印象に残った。そんな久保木の執念は、結果的に実ることになる。入団テストで結果を残し、'13年にタイ3部に当たるリーグのカスタムズ・ユナイテッドと契約。タイの地で、プロ生活をスタートさせた。
「この国で成り上がってやる」
そんな想いを胸に、異国の地で躍動を見せることになる。
点だけは取れるタイプだった。
'13年には8得点、'15年シーズンには19得点でリーグ得点王に輝き、年間ベストイレブンにも選出された。'16年にも11得点を挙げ、タイ・プレミアリーグ(1部)への昇格チャンスを得るまでに存在感を放った。アジアの下部リーグとはいえ、これだけコンスタントに得点を奪える日本人は、海外全体を見渡しても決して多くはない。特に日本でノンプロだったことを踏まえると、タイで非凡な得点感覚を開花させたといえるだろう。
168cmと小柄な久保木は、タイやオーストラリア、インドといったフィジカル重視の国では大きなハンデを背負うことになる。事実、体格を理由に契約に至らなかったケースもあったという。
「自分が技術的には決して高くない選手ということは自覚しているんです。ただ、日本にいた頃から点だけは取っていた。身長や環境、年齢のせいにされたくなかったので、結果を残せば上を目指せる海外の考えは自分にはマッチしたんだと思います。試合の中で得点を重ねることで、『あ、これ入るな』という得点感覚が研ぎすまされていったんです」