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ハリルホジッチは古巣を救える?
傲慢な会長と衝突までの秒読み。
text by
トマ・シモンThomas Simon
photograph byGetty Images
posted2018/11/01 11:30
選手時代にはナントで2度得点王になったハリルホジッチ。クラブのレジェンドの、監督としての復帰に地元は沸いている。
2人には「過剰なまでの魅力」が。
同時にハリルホジッチと仕事をすることの難しさをデイヤンは語る。
「とにかく大変だった。時間がたつにつれて状況はどんどんデリケートになっていった。卓越した監督であるのは間違いない。だがひとたび成功を得ると、権力も栄誉もすべてが彼のものになった。さらに上を目指して、周囲を尊重することがなくなった。たびたび衝突して彼の意向を否定したから、ふたりの間に緊張が高まり関係はとても難しくなった」
ただ、意見を異にするものも少なくない。
「彼との間に軋轢はなかった」と、レンヌ監督時代(2002~03年)の会長であったエマニュエル・クエフは言う。
「ヴァイッドと働くのは刺激的だし十分に可能だ。私自身とても楽しかった。彼とピエール(・ドレオッシ)、私の3人でチームを組み、何の問題もなくすべてがうまく機能した」
レンヌのスポーティング・ディレクターに就任する以前に、リールでもハリルホジッチと働いた経験のあるドレオッシは次のように語る。
「ヴァイッドはスタートから規則を明確にすること、あるいは一緒に規則を作ってから仕事を始めることを好む。お互いの領域が尊重されている限り、そこには何の問題もない。決して妥協しない一徹さも彼の資質のひとつだ。常に同意できるわけではないが、よく話しあってうまくやることができた」
クエフも同意する。
「あらゆることがらに関して、私たちは意見を交換した。誰にも自分の役割があり分野がある。それがとてもうまく機能した。記憶の限り紛糾したことは一度もなく、フランソワ・ピノー(当時のオーナー)はわれわれの仕事をとても高く評価した。ピノーがレジオン・ドヌール勲章を受勲できたのもヴァイッドのおかげといえる」
最後に考慮すべきは人間的な側面とカリスマ性である。
「ヴァイッドには過剰なまでの魅力がある。キタも同様に過剰な魅力があるが、ふたりのそれは同じではない」とドレオッシは言う。
魅力的で規格外のふたつの個性は、はたして良性の化学反応を起こすことができるのか。物語はまだ始まったばかりである。