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ハリルホジッチは古巣を救える?
傲慢な会長と衝突までの秒読み。
text by
トマ・シモンThomas Simon
photograph byGetty Images
posted2018/11/01 11:30
選手時代にはナントで2度得点王になったハリルホジッチ。クラブのレジェンドの、監督としての復帰に地元は沸いている。
ヴァイッドもキタも妥協はない。
第二のオプションは、合理的に割り切って役割を分担することだが、リールでグライユとともにクラブ経営に携わっていたリュック・デイヤンは次のように語る。
「私自身はその方法に至らなかった。彼に必要なのは強い力を持った会長で、直接的かつ絶対的な関係を結べる人物であるからだ。彼の抱く会長のイメージはちょっとレトロで家父長的だ。キタならそのイメージに合っている。キタは昔気質の会長で、チーム作りも移籍もすべてを一緒くたにしてやろうとする。気難しいし感情的で厳しさもある。もし会長だけでなく監督や選手をやることも可能なら、躊躇いなくやっていただろう。
ヴァイッドも同じだ。以前、私は彼にこう言った。
『もし君が好きなことをやりたいのなら、君自身がクラブを買えばいい』と。
ふたりはともに規格外だ。ヴァイッドも(キタと同じ)厳格で妥協しないタイプだ。断固として決断を下し、外観・体躯からも選手たちに尊敬されている。それを選手にぶつけるのを躊躇わない。私にもボールをぶつける気かと言ったことがあるよ」
「彼には建前というものがまったくない」
ハリルホジッチが言葉巧みに策を弄したり、本音と建前を使い分けたことは一度もない。グライユが思い出すのは、ふたりがまだ蜜月時代にあったころの彼の言動である。
「彼には建前というものがまったくない。思ったことをすべて口にする。その率直さが、ときに口にすべきでないことまで喋らせてしまう。それが周囲に衝撃を与える。私も知りあった当初はずいぶんとショックを受けた。
彼にはコミュニケーションの問題があり、人に騙されたことも一度や二度ではないだろう。もう少し角が取れた方がいいのは間違いないが、彼の性格からいってそれは難しいだろう。私が招聘したPSGで最後はうまくいかなかったが、それは本気でチームを構築しようとしたからで、とても重要なことを彼は試みようとしていた。
彼のように真っ直ぐで正直な人間、能力も卓越し圧力にも屈しない人間に出会えたのは幸運だった。すべてに厳しい彼は、自分も最善の努力をするが同じことを相手にも求める。
ときに彼はまるで神がかって見えるし、彼自身も評判を得たがっている。方法さえ間違わなければ素晴らしい成果をあげることができる」