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さすらいのFWカレン・ロバートが
イングランド7部でプレーする理由。
text by
中田徹Toru Nakata
photograph byToru Nakata
posted2018/10/29 08:00
年齢を重ねても、カレン・ロバートが醸しだす雰囲気は変わっていない。
カレンは千葉にチームを持っている。
ステップアップの先として見据えるのは、イングランド5部リーグのクラブだ。
「5部になると、5000人規模のスタジアムが増えるんです。僕はローヴァーズFCというサッカークラブを千葉県木更津市に持ってます。今は千葉県1部リーグですが、将来の夢は、まずJ3に上がること。そのためには5000人収容のスタジアムが必要なんです。僕はイギリスで5000人規模のスタジアムでプレーし、その経験を日本に持ち帰りたい。そして、もちろん選手としてステップアップしたいという思いもあります」
今年の5月と6月、カレンはローヴァーズの一員として千葉県リーグでプレーした。「俺って、まだ体が動く。若い選手ばかりのチームだけど、俺はまだ役に立っている」と感じた。
「いずれはローヴァーズの選手として、大きな怪我さえ無ければ40歳までプレーしたい。そしてJ3まで行った時には、自分をプロ契約にしてJリーガーに戻るのも面白い。それが1つのモチベーション。
今イギリスでプレーしている自分は、ローヴァーズでプレーするためのコンディション作りかもしれません(笑)。でも、本当に試合に出続けるとコンディションが上がるものですね。今、本当に調子が良いんですよ」
「やっぱり夢がありますよね」
薄明るい照明の下、1時間半の練習が終わった。即座に帰っていく選手もいれば、いつまでもピッチに残って自主練習に励む選手もいる。カレンは1時間に1本のバスを逃さぬよう、クラブハウスで時間を調整して帰る。
「ほとんどの選手がロンドンに住んでいるんです。ロンドンならいくらでもサッカークラブがありますから、チームを見つけやすい。この国には、8部リーグのストライカーからイングランド代表になったジェイミー・バーディー(レスター)や、サウサンプトンを3部からプレミアリーグに上げたリッキー・ランバート(元カーディフ)のような選手がいる。うちの選手も本気で上に行こうとしている選手がいっぱいいる。
FAカップは賞金が出る。5回戦からプロが出てくるから、テレビの放映権も絡み、賞金がグッと上がる。プレミアのチームと当たったらとんでもない金額になるんです。だから、この国のFAカップの熱は本当に凄い。バーディーやランバートの話にしても、FAカップの話にしても、やっぱり夢がありますよね」
帰りは渋滞もなく、あっさりと1時間でロンドンに着いた。7部リーグ、そこはカレンにとって、サッカーの母国の真髄を知る場なのかもしれない。