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バスケの写真を撮るなら縦or横?
カメラマンが語る縦位置の存在感。
text by
吉川哲彦Akihiko Yoshikawa
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2018/10/25 17:00
左:大井氏が撮影したNumber519号(2001年)のアレン・アイバーソン。右:今回のBリーグ公式ガイドブックのニック・ファジーカス。
「撮る側は縦のほうが気分が乗るんですよ」
――ところで、大井さんはバスケットの経験はおありなんですか?
大井 ないんです。見るプロです(笑)。スポーツは大好きで、競技を問わず1日見ていられます。バスケはもちろんですが、昔からテレビでやっていたら、野球、サッカーをはじめバドミントンやクライミングの大会だって夢中で見ちゃうんですよね。嫁からはあきれられています(笑)。
スポーツフォトグラファーになろうと思っていたわけでもないですし、いまもそうではないですけれど、気づけばスポーツ選手のポートレートは多く撮っていますね。
――スポーツを撮り始めるきっかけは何だったんでしょう?
大井 最初はNumberの撮影でした。たまたまポートレートを見てくれた人が編集部に紹介をしてくれて。初めて撮った選手が幸運なことにコービー・ブライアントで、そこからNBA関連の撮影をさせていただくようになりました。
当時僕はニューヨークに住んでいたんですが、テレビで全試合見られるからニューヨーク・ニックスの大ファンになって、気づけば日本のNBA専門誌から仕事を頂戴し、写真だけではなく原稿を20年近く書かせていただいてます。
――縦位置と横位置の話に戻るんですが、少し前だとウェブ記事もパソコンで見るので横位置の写真のほうが見映えが良かったと思うんですが、今はスマートフォンで縦長の画面で見ることも多いと思います。それでもやはり縦位置より横位置のほうが見やすいんでしょうか?
大井 縦位置の写真は画面のサイズよってはスクロールして見なければいけなかったりもするでしょうし、横のほうが見やすい、というのはあるんじゃないですかね。ウェブの仕事で、人物絡みの撮影であっても「横位置のみでお願いします」という依頼が普通にあったりします。
話はちょっと変わりますが、特に手持ちのポートレート撮影に関しては、撮る側は縦のほうが気分が乗るんですよ。僕だけじゃないと思うんですけど、縦のほうが撮っている姿勢も様になるし、撮られているほうも「撮られている」という感じがすると思います。横だと「はいチーズ!」みたいになってしまうので(笑)。
――バスケットのプレー写真を撮り始める時に、ある程度下準備や勉強は必要でしたか? 最初の撮影の時とかはどうだったでしょう?
大井 思っていたようには撮れなかったですね。選手がどう動くかはなんとなく知っていたので、難なく撮れるかなと思っていたら、それを上回るスピード感だったからピントが合わない。あと、現地の大手メディアや常連じゃないので、アリーナの天井に設置してあるストロボも使えません。素早く動く被写体を、開放近くの絞りと遅いシャッタースピードで撮るのは難しかったです。
今はフィルム時代の何倍も高感度で撮れるので、その点はある程度楽ですけど。とはいえ、どんなに機材が進歩しても、最後にものを言うのは腕と経験でしょうね。