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バスケの写真を撮るなら縦or横?
カメラマンが語る縦位置の存在感。
posted2018/10/25 17:00
text by
吉川哲彦Akihiko Yoshikawa
photograph by
Ichisei Hiramatsu
「バスケの写真は縦位置のほうが映えると思いませんか?」
編集部からこんな疑問を投げかけられたのは、発売中のNumber PLUS『Bリーグ2018-19公式ガイドブック』の校了が終わった直後のことだ。
インターネット全盛の昨今は、報道媒体もウェブメディアが拡大の一途。スポーツ関連メディアもその例に漏れず、読者はウェブ記事をパソコンやスマートフォンで読む機会が多いだろう。そうしたウェブ記事を注意して見ていただくと、フォーマットがほぼ決まっていて、そこで使われているのは横に長い(=横位置)写真がほとんどだということが、お分かりいただけるのではないだろうか。
一方でフォーマットがより自由な紙媒体では、縦に長い(=縦位置)写真が多く使われる。その理由を「背の高さにかかわらず、人間は縦に撮ったほうが収まりがいい。写真術が発明されて以来、人物を撮る時は縦が基本」と説明するのは、今回のBリーグ公式ガイドブックでも撮影をしている、フォトグラファーの大井成義だ。
大井は過去にアメリカ・ニューヨークに9年間在住していたことがあり、NumberのNBA特集号で選手のポートレートやプレー写真を撮ってきた人物。今回もロバート・サクレとライアン・ケリー(いずれもサンロッカーズ渋谷)、ニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)の撮影を担当している。“縦位置”の強みを理解し、バスケットボールの撮影経験が豊富なフォトグラファーとして、“横位置”の写真が主流になりつつある現状をどう捉えているかを聞いてみた。
――今回ニック・ファジーカス選手などを撮影されましたが、ああいったサイズの選手(ファジーカス選手の身長は210cm)を、どう撮ろうと考えていましたか?
大井 縦位置のほうが、人並み外れた身長の高さをダイレクトに表現しやすく、より迫力を出せると考えましたね。横位置に収めるとどうしても空間ができてしまうので、迫力という点では縦位置のほうが断然強い。横の場合は、その空間を活かせたり、空気感や物語性なんかを出しやすいというメリットもあるけど、迫力は抑えられてしまう。
同じようにバストアップのポートレートも、存在感を強調したかったので縦1本で撮りました。人間は顔もバストアップも全身も、形は縦長の長方形なので、縦位置のほうが安定感や存在感を表現しやすいような気がします。
――ポートレートではなくゲームを撮る場合は、縦と横のどちらが良いと思いますか?
大井 それもやっぱり縦だと僕は思います。人間を撮ることには変わりないので、縦のほうが収まりがいいですね。サッカーなんかはピッチが広い分、バスケより広い画で撮るケースが多く、1枚に複数人を入れて撮る時などは横のほうが適してるんですが、バスケは4~5人をまとめて狙うことはあまりない。
リングが上にあって、ジャンプの高さを伝えるには床も入れたかったりしますし、そうなると縦のほうが撮りやすく、いろんなシーンに対応しやすいという側面があります。また、一瞬横位置で撮りたいなと思っても、ひとつのプレー中に縦と横を瞬時に切り替えることも難しいんですよ。横位置で格好いい構図を撮れる人は上手いなと思いますね。