炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島の中心は鈴木誠也と大瀬良大地。
昨年戦力になれなかった2人の逆襲。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNanae Suzuki
posted2018/10/17 08:00
今季は鈴木誠也が打率.320、30本塁打、94打点、大瀬良大地が15勝7敗、防御率2.62とエースと4番の役割を果たした。
大瀬良にとっては2014年以来の先発。
そしてもう1人、大瀬良にとっては、新人だった'14年のファーストステージ第2戦以来のCS先発が訪れようとしている。
4年ぶりの先発マウンドは、初戦が有力視されている。1年をかけて、経験を信頼を積み重ねてつかんだ大黒柱の証しでもある。
1年前の苦い記憶よりも、5年前に快投した感触の方が強く残っている。今季登板前に取り入れたモチベーションビデオにも、阪神打線を7回まで無失点に抑えた姿を盛り込んでいる。
今年、登板ごとに気持ちを高ぶらせてきた舞台に、ようやく再び立とうとしている。5年前とは違い、かかる期待も課せられた役割も大きい。ただ、不思議と力は入らない。
「経験しているし、やっぱり甲子園でのイメージもある。いつも通り行けるかなとは思っている」
去年とは立場がまったく違う。
快投演じたCS登板から過ごしてきた4年間は、苦しかった。
エース候補と期待されながら、チーム事情から中継ぎへの配置転換を余儀なくされ、右肘痛や右脇腹痛で出遅れることもあった。昨年は先発として2度目の2桁勝利をマークするも、CSでの先発機会はなく中継ぎで登板。立場は“先発の1人”に過ぎなかった。
ケガが悔しさ、苦しさを血肉とし、大胆な自己改革で急成長を遂げた。苦味にはデトックス効果があると言われるが、2人は苦い経験によって選手として洗練された。昨年のCSでは戦力となれなかった2人が、今年は4番と初戦の先発としてチームの柱を担う。2年ぶりの日本シリーズ、34年ぶり悲願には、彼らの働きは欠かせない。