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スラムダンクの魚住、高砂が手本。
太田敦也がBリーグで伝えたいこと。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byB.LEAGUE
posted2018/10/10 08:00
昨季は全60試合に出場し、シーズンを通じて故障者が続出したチームを支えた太田。
魚住に魅かれ、高砂から学び。
やると決めたら一直線。派手さはなくても、勝利に欠かせないプレーに徹する太田の信条がよく分かるエピソードがある。『スラムダンク』で、どのキャラクターが一番好きかと尋ねたときに出てきた名前と理由だ。
太田がまず、最も身近に感じたキャラクターとして挙げたのは、陵南高校の魚住純。身長202cmのセンターは、高校入学当初、フットワークトレーニングなどの基本練習についていけず、苦しんだ過去を持つ設定だ。
「魚住は自分と同じような感じだなと感じました。僕は千葉の柏で高校時代を過ごしたのですが、最初1年の時は学校帰りに自転車を降りたら両足が攣って倒れるようなこともあって。フットワークでヘロヘロになってというのも同じような感じでした。身長が高くて、同じような境遇だなと思いましたね」
しかし、好きな選手は別にいた。海南大附属高校のセンタープレーヤー、高砂一馬だ。高砂の話になったとたん、それまで静かな話しぶりだった太田の口調がグッと熱を帯びた。
「海南は神奈川から全国大会に出る、メチャクチャ強い高校ですよね。(海南の選手で作品に)登場するのはいつも牧紳一や神宗一郎なんですが、でも、そのチームでインサイドを全部1人で支えてるのが、そんなにデカくもない高砂なんですよ。目立たないのに全国ベスト4に入るチームのインサイドを全部支えている。僕はそれが一番すごいと思うんです」
「目立たなくていいから……」
高砂の身長は191cm。作品の舞台は約25年前の高校バスケ界であるとはいえ、確かに「そんなにデカくもない」と言える。
「目立たなくていいから、そういう成績を残して、でもよく見たら、この選手が支えている。そういうのが一番いいなと、僕は思っているんです」
34歳のビッグマンは、ほぼ既にその域に達している。しかし、太田が見つめる場所はもっと高く、もっと遠いところ。その志がある限り、存在感はさらに増していく。