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前人未到の1000試合登板。不世出の
鉄腕・岩瀬仁紀を生んだ奇跡の数々。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2018/10/01 14:30
9月28日の阪神戦(ナゴヤドーム)、1点リードの9回にマウンドへ。前人未到の1000試合登板を、407個目のセーブで飾った。
落合監督が命じた過酷な任務。
「あの状況でマウンドに上がり、3人で抑えて帰ってくる。あんなことができるのは岩瀬だけだ。もっとそのことを評価されてもいいんじゃないのか」
岩瀬をセットアッパーからクローザーに配置転換し、20年の現役生活の中で最も長く「監督と選手」の関係だったのが落合博満氏だ。
2007年11月1日。日本ハムとの日本シリーズ第5戦(ナゴヤドーム)で、球史に残る「完全試合継投」が行われた。
先発の山井大介が8イニングを投げ、落合監督は継投を決断した。
1点差、日本一、そして完全試合。
失点どころか安打も四球も出してはいけない究極の救援だった。1000試合にも407セーブにもカウントされない登板こそが、岩瀬を際立たせる。あれほどまでに過酷な任務はないだろう。それを命じた落合監督と遂行した岩瀬。2人にだけ通じる思いはきっとあるはずだ。
松井秀喜、黒田博樹、井口資仁……。
1974年生まれの同学年には松井秀喜や黒田博樹、ロッテの監督になった井口資仁らがいる。
最後まで現役でいるのが中継ぎで奮闘する岩瀬になろうとは、同世代の選手は思いもしなかったかもしれない。
1学年下の松井稼頭央に2学年下の新井貴浩、チームメートの荒木雅博ら現役の名球会会員が続々と今季限りでユニホームを脱ぐ。2000安打を達成した福浦和也が来季も現役続行を表明したが、球界の若返りが大幅に進むのは間違いない。
レジェンドと呼ばれた男たちの決断。
会見で引退を表明したとき、どれも清々しい表情に見えたのはやりきった思いがあるからだろう。