“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
松本山雅内定・山本龍平が熱く語る、
名門四中工の主将としてのノルマ。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/09/27 07:00
浅野拓磨らを輩出した四日市中央工業高。その主将である山本龍平は来季、松本山雅の一員となる。
チームメートもガツガツと。
「練習中でも、明らかに2年生が自分にガツガツ来るようになったんです。僕がボールを持つと、これまで以上に僕からボールを奪おうとするし、球際でも本気で掛かって来ていることが練習から伝わるようになった。練習中の目の色が劇的に変わったんです。それに対して僕も逆に楽しくなってきたんです。
練習中からワクワクして、緊張感があって、凄く楽しくなってきた。以前から練習は集中してギラギラやっているつもりでしたが、そのレベルが1つ上がって、よりチーム全体から本気度が伝わってくるようになって、キャプテンとして凄くやりやすくなった。以前は“球際を厳しく行け!”や“声をもっと出せ!”など、言わなくても分かるようなことを言わないといけなかった。でももうそういう声はあまり必要なくなったんです。
2年生に何人か可能性がある選手がいて、“こんな自分でも行けるんだぞ”ということを彼らに示せたことは嬉しい」
山本は四中工の“希望の光”に。
山本龍平がプロになる。この事実がチームにかなりの好影響を及ぼしたのには大きな理由がある。
山本のプロ入りは、彼が入学して以降、四中工が初めて全国的に残した結果だった。昨年までの2年間、四中工からのプロ入りはゼロ。そして今年を半分以上消化しても全国大会出場はゼロ。チームとして結果が出ていないからこそ、どこかチーム全体が疑心暗鬼になってしまっていた。
“信じるべき柱=結果”がなく、「どれだけやってもどうせ勝てないんじゃないか」、「誰にも注目されていないんじゃないか」という雰囲気が少し漂っていた。しかし、山本がプロになったことで、「コツコツと頑張れば注目してもらえる場所にいる」という確信が持てるようになった。
現に2年生FW森も「龍平さんがプロになったことは凄く大きかった。身近にそういうお手本がいることで、“俺もプロになりたい”という気持ちが強くなったし、ここで一生懸命やれば必ず誰かが見てくれると思うようになった」と意識の変化を口にした。
山本の存在は、四中工にとっても大きな“希望の光”になった。諦めずに全力を尽くせば、必ずチャンスが転がってくる場所。この確信はチームを変え、山本自身もより変えてくれた。