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松本山雅内定・山本龍平が熱く語る、
名門四中工の主将としてのノルマ。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/09/27 07:00
浅野拓磨らを輩出した四日市中央工業高。その主将である山本龍平は来季、松本山雅の一員となる。
インハイ予選でまさかのPK負け。
並々ならない気持ちで臨んだが、残酷な結果が待っていた。四中工にとって県予選初戦となる1次トーナメント2回戦、伊賀白鳳戦でPK戦の末にまさかの敗退。4チームによる決勝リーグにすら進めない屈辱を味わった。
「PK負けした瞬間、もう頭の中が真っ白になって、それからの記憶がないくらいショックでした。しばらくは何も考えられなかった」
「本当にプロの芽どころか大学も厳しいんじゃないか」
喪失感と絶望感しかなかった。
4月末であっさり終わってしまったインターハイ予選。全国へのラストチャンスとなる選手権予選までまだ半年近くある。この時間をどう過ごすか……。そう思いを巡らせているタイミングで、江原スカウトが動き出した。5月に松本への練習参加の打診をしたのだ。
「最初は何で俺なんやろ」
四中工の樋口士郎監督から伝え聞いた山本にとっては、まさに“青天の霹靂”だった。
「士郎さんから“松本の練習に参加するぞ”と言われたときはもうびっくりで、何がなんだか分からなかった。全国に一度も出ていないし、こんな身長(172cm)でCBをやっているのに、練習参加の声が掛かったことに喜びよりも不思議な気持ちが大きかった。“なんで俺なんやろ”と思いました」
半信半疑のまま、山本は松本に向かった。初めてのプロの練習。初日はあまりのレベルの高さについていけず、愕然とした。
だが「ないと思っていたチャンスが来た以上、無駄にしたくない」と、後悔のないようにドリブルからのビルドアップとパス、クロスを見せ、3バックの左、左ウイングバックとしての可能性を示した。
練習参加最終日にはカターレ富山との練習試合に45分間出場し、迷いなくプレーすることができた。その場での“合格”こそならなかったが、反町康治監督から「良かったぞ。ドリブルで一瞬の速さがあるな」と声を掛けられ、帰り際には江原スカウトに「また夏休みに練習に呼ぶからよろしく」という言葉をもらった。