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大坂なおみの冷静さに恐れ入る。
20歳の女王が得た「負けにくさ」。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2018/09/22 11:30
大坂なおみに敗れた選手は「強い」と口を揃える。それほど今の大坂の充実度は際立っているのだ。
リズムを崩されミスは出したものの。
しかし、すぐにブレークの返礼をするのが今の大坂の強さだ。ダブルフォールトでサービスゲームを落としたストリコバは、ボールをコートに打ち付けて悔しがった。
相手もあきらめなかったが、流れは次第に大坂に傾く。第2セットは中盤のブレークを生かして6-4。2試合連続のストレート勝ちだ。
すっきり勝てなかったのは、ミスが多かったからだ。アンフォーストエラーは2セットで26本、2回戦では9本だったから、3倍近い。プレーが安定しなかった理由を大坂は「分からない」としたが、ミスの何割かはストリコバのプレーにリズムを崩されたことによるものだった。
前日のフルセットで「疲れていた」というストリコバだが、ベテランのプレーは巧みだった。ドロップショット、スライス、ロブと、絶えずリズムが変わる試合は強打者にも制御が難しい。
全米OPで大坂は大人になった。
とはいえ、試合後の大坂のコメントには恐れ入った。
「すべての試合で完璧にプレーするのはほぼ無理。そこまで良いプレーではなかったが、修正してなんとか勝てた。私の仕事は常にベストのプレーを絞り出すことで、この状況でそれができた」
コーチとともにひととおり試合を振り返り、総括ができていたのだろう。それにしても、この冷静さはどこから来るのか。
楽しい試合でもなければ、楽な試合でもなかったはずだ。「しっかりと精神的に自分を支えなくてはいけない」試合を、最後まで破綻なく戦いきった。すなわち「ジョブ」をやり遂げた。高校球児が甲子園で急成長するように、大坂は全米オープンの7試合で大人のプレーヤーに生まれ変わったのか。