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クリンチャー&武豊、仏での前哨戦。
「あくまで凱旋門賞が本番なので」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2018/09/21 16:30
9月16日、フランスでフォワ賞に出走したクリンチャーと武豊。
仏重賞制覇したジェニアルも出走。
その後、迎えたのが先述のフォワ賞だが、この日はもう1頭、ジェニアル(牡4歳、栗東・松永幹夫厩舎)も出走した。
同馬が走ったのはパン賞(GIII、パリロンシャン競馬場、芝1400m)。11頭立てとなったこのレースで、ジェニアルは2番手を進んだ。
同馬は日本では500万下条件の身に過ぎないが、果敢にフランスへ遠征すると7月22日、メゾンラフィット競馬場で行われたメシドール賞(GIII、芝1600メートル)を見事に逃げ切り勝ち。その後、挑戦しようとしたGI・ジャックルマロワ賞を調教中のアクシデントによる外傷で回避したが、この度、復帰。重賞連勝を目指しての出走となった。
同馬は道中2番手を追走したが、直線で失速。最後は鞍上が無理をせずに流すような形となり完走10頭中の最下位10着に敗れた。
見守った松永は唇を噛んで次のように語った。
「状態は良さそうでしたけど、今日は早目に来られて失速してしまいました」
また、騎乗した武豊は中間、順調さを欠いていた事にも触れ、次のように語った。
「いつもの事とはいえ、また左へ行きたがりました。今回は順調さを欠いた影響もあったのか、最初から少し変な感じがありました。直線で手前を変えたところで違和感があったので最後は鞭も入れずに流しました」
故障も心配された同馬だが、ゴール後には止まる事無くグングン走っており、レース後、陣営からも「とりあえず馬体は無事」とのコメントが出された。
クリンチャーと世界の強敵たち。
そのパン賞より前に行われたのがフォワ賞だ。本番の凱旋門賞と全く同じパリロンシャン競馬場の芝2400メートルという条件にクリンチャーを含めた6頭が名を連ねてきた。
日本の競馬に慣れているファンからみると6頭立てというのは少頭数に思えるだろう。いや、事実、少頭数かもしれない。しかし、レースの登録料が高いわりに賞金の低いヨーロッパ競馬で、少頭数というのはすなわち良い馬が揃っているという事である。強い馬がいるために勝ち目がないと思えば、少ない賞金のために多くの登録料を支払わないのは道理だろう。
そして今回のフォワ賞もまさにそういうメンバー構成となった。
昨年のブリーダーズCターフの勝ち馬タリスマニック、同凱旋門賞2着だったクロスオブスターズ、GIを含む重賞連勝中のヴァルトガイストに昨年のアイリッシュダービー勝ち馬カプリなど。クリンチャーにとっては決して楽なメンバー構成ではなかった。
とはいえ更に強敵の揃う凱旋門賞を考えれば、ここで泣き言は言っていられない。そんな思いでの挑戦だった事だろう。