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自ら率先してエコノミークラス。
森保一監督が示した誠意と気遣い。 

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木本新也

木本新也Shinya Kimoto

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photograph byJFA/AFLO

posted2018/09/22 09:00

自ら率先してエコノミークラス。森保一監督が示した誠意と気遣い。<Number Web> photograph by JFA/AFLO

トレーニング中、スタッフとともにゴールを運ぶ森保一監督。日本代表の新たなリーダー像となるかもしれない。

アジア大会でも試合ごとに成長。

 この試合は香川真司、長友佑都、吉田麻也、大迫勇也、柴崎岳ら欧州クラブに所属する経験豊富な選手たちの招集が見送られていた。

 10、11月の合宿では復帰する見通しで、ピッチに立った若手にとっては貴重なアピールの舞台。そんな中でも独り善がりなプレーは少なく、各選手がチームの輪の中で個々のストロングポイントを出していた。

 アジア大会もそうだった。23歳以下の大会に21歳以下で臨んだこともあり、1次リーグ初戦でFIFAランク161位の格下ネパールに1-0と苦戦するなど、序盤は低調な内容の試合が続いた。

 だが、試合を重ねるごとに一体感は増し、決勝トーナメントでは準々決勝でサウジアラビア、準決勝でUAEを撃破。韓国との決勝で延長戦の末に1-2で敗れたが、兵役免除を懸けてオーバーエイジ枠を採用する宿敵と激闘を演じた。チームのために体を張る姿、延長戦で2点リードされても諦めないメンタルは称賛に値した。

C大坂、松本山雅へ“謝罪行脚”。

 五輪代表は昨年12月の立ち上げから約8カ月、A代表は今回が初めての活動だったが、どちらのチームにも輪の中で個性を発揮し、クリーンにひた向きに戦う姿勢は共通していた。戦術面の構築は今後、本格化させていくことになるが、土台には“森保色”がはっきりと表れていた。

 A代表が合宿を打ち上げたコスタリカ戦の翌日、森保監督は午前8時に大阪市内のホテルを発ち、C大阪、J2松本山雅のクラブハウスを訪問した。A代表合宿中に右足薬指を骨折した杉本健勇と、アジア大会の準決勝UAE戦で右足首靱帯(じんたい)を損傷したFW前田大然の故障を詫びるための「謝罪行脚」だった。

 1カ月ぶっ通しで働き続け、この日から約1週間のオフに入る予定だったが、休養開始を1日先送り。森保監督は「選手を貸していただいて我々の活動ができる中で、クラブが大切な時期に戦力を失うことになってしまった」と神妙な面持ちで語った。

【次ページ】 実直な姿は選手にも影響を与える。

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