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イチローに憧れた少年がMVP候補。
ブルワーズ進撃の中心イエリッチ。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2018/09/10 08:00
今季絶好調のイエリッチ。マーリンズ時代にはイチローからの薫陶を受けた。
WBCで3番を任され優勝に貢献。
イエリッチは元々、能力の高い選手だった。
2017年のWBC米国代表のジム・リーランド監督は、ナ・リーグ二冠王のノーラン・アレナド内野手や、本塁打王ジャンカルロ・スタントン外野手ら並み入るオールスター揃いのチームで、当時25歳のイエリッチを「米国代表の3番」として起用し続けた。
「彼(リーランド監督)から教えられたことも、大きな財産になっている。彼は一生懸命にプレーして国の代表として恥じないプレーをすることが大きな意味を持つんだって、いつもモチベーションを上げてくれたんだ」
とイエリッチ。彼はチーム最多の4二塁打を記録するなどして打率.310、出塁率.375、長打率.448と活躍し、米国の同大会初優勝に貢献した。
あれから1年以上が過ぎ、イエリッチがかつて憧れたジーターの経営方針によって離散したマーリンズの外野手は全員が、ペナントレースの重要な役割を果たしている。
イエリッチを筆頭に、ア・リーグのワイルドカード争いをリードするヤンキースのスタントン、ナ・リーグのワイルドカード争いでブルワーズを追走するカージナルスのマルセル・オスナと互いに切磋琢磨しているように見える。
「マーリンズにはそれぐらい才能のある選手たちが集まっていたから、バラバラになってしまったのは残念だけれど、もう過去のことなんだ。僕はこのチームに来てハッピーだし、僕らは毎日、今いる場所よりも上を目指して戦い続けている」
「9月の野球」でこそ貢献したい。
メジャーリーグには「September Baseball=9月の野球」という言葉がある。
ペナントレース終盤の緊張感あふれる試合のことを意味するが、それを本当の意味で味わえる選手はそう多くない。イエリッチは今、その幸福な時間の中で自分の才能を思う存分発揮している最中であり、走攻守すべてで彼のプレーがチームの成績に直結する=もっとも価値のある選手になっている。
「自分にコントロールできないことを考えたって仕方がない。僕が今できるのは、一生懸命プレーして、チームの勝利に貢献することだけなんだ」
9月の野球が終わる頃、イチローに憧れた少年がMVPの最有力候補になっているかも知れない――。